顧客接点を拡大するD2C戦略、リアル店舗との棲み分けに手応え=花王
花王(東京都/長谷部佳宏社長)は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環で、自社ECを通じた販売や顧客との関係強化に取り組んでいる。このD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)戦略を通じて、百貨店をはじめとする従来型流通、アマゾンや「楽天市場」といった専業ECとも差別化を図り、ブランド価値の最大化をめざしている。
5カ年中計の柱がDXの推進
日用品や化粧品などさまざまなロングセラー商品を生み出している大手メーカーの花王は現在、2021年度を初年度とする5カ年の中期経営計画「K25」を実施している。ビジョンに掲げるのは「Sustainability as the only path」で、①「持続的社会に欠かせない企業になる」、②「投資して強くなる事業への変革」、③「社員活力の最大化」という3つを方針とする。最終年度の25年度には、売上高1兆8000億円、営業利益2500億円などの数値目標を設定している。
これに対し、同社が目標達成のカギと位置づけるのがDXの推進だ。デジタル技術を積極的に活用、既存ビジネスを見直すほか、新規分野を開拓することにより、次代にも通用する事業の実現、再構築をめざしている。
中計以前から、関連部署を設置するなど徐々に体制を強化してきた。18年には、現在、経営トップの長谷部佳宏氏が、社長就任前の専務時代から陣頭指揮を執り、「先端技術戦略室」を立ち上げた。そのもと各種生産性の向上を図る「先端技術経営改革部」、新規事業を創出する「デジタル事業創造部」、既存事業のDXを進める「DX戦略推進センター」という3部署を順次設けた。
その中でUX(顧客体験)、CRM(顧客関係管理)などとともに、花王が重要テーマとして力を入れるのがD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー:メーカーが中間業者や店舗を通さず、顧客に直接販売する)のECである。DX戦略推進センターが中心となって、販売のデジタル化を進めている。
一連の活動の背景とねらいについて、花王コンシューマープロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター ECビジネス推進部の生井秀一部長は、次のように説明する。「取り巻く経営環境が大きく変化しており、従来型のビジネスモデルでは限界を感じていた。これに対し、販売をデジタル化することでさらなる成長をめざしている」。
従来、デジタル関連のノウハウ、知見は、さまざまな部署に分散していたが、それらをDX戦略推進センターに集約。現在、販売のほか生産、開発といった部署に所属していた人材が集まり、効果的な施策を練り、実施している。いわば組織横断型で、同社にとり新しい組織形態である。
こうした動きを各所で行い、「ヘルス&ビューティケア」「化粧品」など既存事業を活性化。一方、健康をサポートする「ライフケア」分野の新事業にも取り組んでいるのが、現在の花王の姿である。
リアル店舗とはバッティングしない
花王が取り組むECだが、同社ではその形態を大きく3種類に分類する。
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