「ピンチがビッグチャンス」に アイリスオーヤマ好調の2011年度

2012/01/13 00:00
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 宮城県では「明るい話を聞きたければ、アイリスオーヤマ(宮城県)の賀詞交歓会に行け!」と言われている。そのアイリスオーヤマ賀詞交歓会が2012年1月12日に開かれた(@ホテルメトロポリタン仙台)。大山健太郎社長は、どんな話をしたのだろうか?(文責:千田直哉)

 

 2011年度は、3・11の東日本大震災、その後の福島第一原子力発電所からの放射能流出、と大災害が続き、未曾有の年度となった。

 アイリスオーヤマも角田工場、宮城県内に13店舗を展開するホームセンター「ダイシン」が大きな被害を受けた。ダイシン石巻店に至っては、店内に津波が押し寄せ、半年ほど店舗を営業することができなかった。

 従業員の中からは3人の犠牲者を出した。また、たくさんの従業員が一時的に避難所暮らしをせざるを得ないような状況に追い込まれた。

 

 こうした状況を目の当たりにして、「アイリスオーヤマの優先課題は何か?」。非常に悩んだ。

 当社は被災者の方々が必要とする製品をたくさん製造している。

 東北経済の今後を考えると、当社のいち早い復旧が被災地および東北地方の活性化につながると判断して、「復旧第一で仕事に取り組んでほしい」と従業員にお願いした。

 


「ダイシン」には、3月12日の早朝から、年百人という多くのお客様が並び、長蛇の列をつくった。全ての店舗の電気が点かない。店舗の什器は壊れ、商品は散乱し、一部では天井が崩落する、壁が崩れるなどのひどい状況にあったにもかかわらずだ。

 そこで「ダイシン」の従業員は、お客様が必要とする商品を店の外に並べて、販売を続けた。店舗を1時間でも早く開けように指示を出し、角田工場から200人を超える従業員を「ダイシン」の店舗に派遣して復旧活動に努めた。

 

 その甲斐あって、電気が流れ始めた瞬間から、「ダイシン」の店舗を全面的に再開することができた。

 地域の方々からは「ありがとう」という言葉を超え、「助かった」と感謝の声をたくさん頂戴した。

 角田工場も電気が流れたところで試運転をスタートさせ、水道が回復した時には、フル稼働させることができた。

 宮城県内でも屈指の速度で再稼働することができた工場と自負している。

 

 実は、2010年7月に『ピンチはビッグチャンス』(ダイヤモンド社刊)という単行本を上梓した。46年間の社長業を振り返った時にアイリスオーヤマはピンチがあった翌年には常に大きく飛躍発展してきた。それがこの単行本のタイトルになっている。

 まさか、発行の10カ月後にこんなピンチの状況が訪れるとは夢にも思っていなかった。

 

 そして、今回の大災害も「ピンチはビッグチャンス」を体現した。とくに春以降は、節電需要に対して積極的に商品開発を行った。その代表格はサーキュレーターであり、年間300万台のペースで販売している。

 一昨年から注力してきたLED(発光ダイオード)照明も好調だ。3月末の段階で中国の大連工場に飛び、増産計画を立てるなど迅速に対応した。

 

 その結果、アイリスオーヤマの2011年度の売上高は1000億円(対前年度比17.8%増)を達成できた。営業利益は、速報値で92億円(同34.1%増)。これらは過去最高の数字だ。 

 経常利益は、29年来の株安による評価損、東日本大震災の特別損失などがあったために残念ながら対前年度ではマイナスになる見込みだ。

 

 さて、2012年度の話をしたい。

 私は、2011年度以上に節電需要が大きなトレンドになると予想している。原子力発電所が再稼働できない状況が続く中では仕方のないこと。電気料金もあがるだろう。

 

 LEDは国内家庭用電球ではナンバーワンのシェアを獲得するに至った。また、チェーンストアを中心にたくさんの店舗や事業所で当社のLEDを導入してもらっている。

 LEDは2011年度に数多くの新製品を開発した。発光効率も従来の80%から100%に改善することができている。また量産効果によって、コスト削減を図ることもできている。これまでは5年間での償却だったが3年間に短縮している。

 そうすると、店舗や事業所などの法人需要はさらに動きが大きくなるものと考えられる。実際に多くの注文が殺到している。

 今年はLED照明だけで売上高350億円を達成したい。2011年度の3.5倍の数字になる。

 

 また、2011年7月1日にヘルスケア事業部を新設した。H&BC(ヘルス&ビューティケア)、化粧品、サプリメントなどを扱う部門で、ドラッグストアやコンビニエンスストアなど販売チャネルの拡大を図ることができた。今年は商品開発ならびに販売促進をさらに強化していく。

 

 従来当社はプラスチック収納が中心だったが、それに加え、寝具やベッドなどのインテリア商品にも力を注いでいる。過去の商品だけではなく、新しいニーズに合った商品を提供することによって、今年は1350億円の売り上げを目指す。つい10数年前の当社の年商がたった1年間で上乗せすることになる。

 

 政治も経済も先行きは不透明だが、アイリスオーヤマは、このように大きな目標を掲げた。

 

 次に、アイリスオーヤマグループについて話をしたい。現在22社ある企業のほとんどが好調だ。

 日本国内では、ネット通販のアイリスプラザカンパニー(宮城県)、アイリスチトセ(宮城県/大山富生社長)、ダイシンカンパニー(宮城県/村井幸一社長)、などは2ケタ成長している。

 中国国内の店舗網も増え、順調に拡大している。

 

 グループ全体の売上は2010年度は2000億円弱だったが2011年度は2350億円(同18%増)ということで大きく伸ばした。営業利益は200億円(同47%増)を超えてくると思う。

 

 2010年度は「先手必勝の経営」、2011年度は「挑戦する年度」とこの場で、アイリスオーヤマのモットーを述べてきた。

 今年は「飛躍をする年」にしたいと考えている。

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