大木ヘルスケアホールディングス代表取締役会長 兼 社長 松井秀夫
次代を見据え需要創造型の中間流通業をめざす!

聞き手=下田健司 構成=室作幸江
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医薬品を中心に、健康食品から日用雑貨まで幅広い商品調達力をもつ大木ヘルスケアホールディングス(東京都:以下、大木ヘルスケアHD)。一方で、消費者の潜在ニーズに応える新たな商品の企画開発・店頭展開にも注力している。同社はどのようなビジネスモデルを描いているのだろうか。松井秀夫会長兼社長に聞いた。

組織を通じて社会貢献する

まついひでお
松井秀夫(まつい・ひでお)●1942年6月28日生まれ。66年3月慶應義塾大学卒業後、同年4月小松製作所入社。72年8月大木入社、78年12月取締役、96年12月代表取締役社長就任。2010年6月代表取締役会長兼社長執行役員。15年10月大木ヘルスケアホールディングス代表取締役会長兼社長執行役員。

──大木ヘルスケアHDのこれまでのあゆみについて教えてください。

松井 創業は1658年、近江商人の大木口哲が滋養強壮薬「大木五臓圓」を売り出したことに始まります。江戸両国に「大木五臓圓本舗」を開き、製造販売のほか、大衆薬の卸売業を行ってきました。ちょうど来年で創業360周年を迎えます。

 ただ、1971年に創業家の大木家が経営に失敗し、多くの企業の力を借りて会社を再建しました。そのときに人事課長として入社したのが私です。一企業として脱皮を図るために、大木の社員としてどうあるべきかを明確にするとともに、組織づくりを行いました。それが「大木の精神」と「大木マン8ヶ条」です。

──「大木の精神」と「大木マン8ヶ条」は、それぞれどんな内容ですか。

松井 「大木の精神」とは、一言で言えば、経営理念です。

 「われらは常に社会への役立ちを考え、組織を通じて何かをしたい人、足跡を残したい人の集いである。われらは常に研鑽に努め、意欲ある意識と行動を通じて、存分に能力を発揮できる組織作りをする」

 つまり、組織を通じて社会に貢献するというのが当社のモットーです。「社会貢献をしたい」と考える人達の“器”が当社なのです。一人ひとりの力は弱くても、組織をつくり、励まし合い、目標を達成していく。そのために、自分を戒めるものとして「大木マン8ヶ条」があります。

 「自分が会社であれ。問題意識を常に持て。具体的に提案し、議論を厭うな。自分の領域でプロを目指せ。過重な仕事に挑戦しろ。仕事を通じて自らを完成せよ。礼節を欠かすな。健康であれ」。これが「大木マン8ヶ条」です。

 とかく「会社は株主のもの」と考える向きが多いようですが、私はそうは思いません。昨今、原丈人氏が『21世紀の国富論』で紹介した「公益資本主義」という概念が注目を集めています。まさにそれこそが当社の考えるビジネスのあり方です。社会貢献のやりがいと生活の安定を両立させることが、当社の経営理念であると自負しています。

消費者の潜在ニーズを顕在化する中間流通業

──大木ヘルスケアHDの考える社会貢献とは、どのようなことですか。

松井 消費者満足度の高い商品をお届けすることです。これまで培ってきた調達力を生かして豊富な商品を消費者に提供することはもちろん、消費者の潜在ニーズを顕在化し、それに応えた新たな商品を開発していくことも、当社の使命であると考えています。

 そもそも消費者のニーズというのは、時間や場所、収入などによってさまざまです。しかも、ライフスタイルが多様化する現代においては、個々のニーズはともすれば潜在化する傾向にあります。

 たとえば、「左手が不自由な人でも簡単に着脱できる下着が欲しい」というニーズがあったとします。しかしながら、需要は少ないだけに大量生産を基本とするメーカーは、そのような下着をあえて製造することはしないでしょう。仮に商品化できたとしても、卸売業が多くは売れないと判断したり、たとえ小売店に流通したとしても、同じ理由で店頭に置かなかったりするかもしれません。つまり、商品が開発されて店頭に陳列されるまでの過程で、消費者のニーズが「なかったこと」になる場合があるのです。そうならないために、消費者サイドの視点に立ち、潜在需要を顕在化していくことが、当社の果たすべき役割と考えています。

 今、私達がめざしているのは、「医薬品スタンディングの美と健康と快適な生活にウィングをもつ需要創造型の新しい中間流通業」です。

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