週末読書おすすめの一冊:IT業界のサグラダファミリアに挑む、みずほ銀行の19年

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みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史(日経BP)

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史
本体価格1,800円+税 / 日経BP

著者:日経コンピュータ

みずほ銀行×システムと聞いて、ネガティブな印象を持つ人は多いであろう。

2000年、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の三行が経営統合し「みずほホールディングス(現みずほフィナンシャルグループ)」が誕生。そしてその2年後の2002年4月、リテール業務を担う「みずほ銀行」と、ホールセール業務を担う「みずほコーポレート銀行」が華々しく開業する。

そしてその栄えある舞台と時を同じくして、大規模システム障害が発生。

また、東日本大震災直後には、義援金振り込みが殺到したことが引き金となり、振り込み遅延やATM停止など、二度目の大規模なシステム障害を引き起こす。

この震災直後のシステム障害の反省から、みずほ銀行は抜本的なシステムの見直しを始め、ついに2019年、IT業界のサグラダファミリアと称された新システムが稼働する。

この、みずほ銀行の19年に及ぶ苦闘の歴史。これを対岸の火事として侮るなかれ。

もちろん、参加ベンダー1000社、35万人月という巨大プロジェクトはそうそう見当たらない。しかしながら、システム障害を引き起こす過程や、次々と発生する問題、その根っことなる問題は、部署間の意思疎通の不備であったり、経営陣のITに関する認識の甘さ、現場からの報告の遅れ、運用マニュアルの不備など、ビジネスシーンで「ごくありふれた」問題が積み重なったことが要因であったという。

ここに、多くのプロジェクトに共通する「気づき」を得られる。

本書は、1999年より銀行×ITに注目した日経コンピュータ社が当時の書籍・記事などをもとに作成した、一つのドキュメンタリーである。当時の記者会見の様子なども克明に記されており、システム障害に突き進んでいく様子がつぶさに見ていくことができる。

大銀行が度重なる失敗から巨大プロジェクトを完成に導くまでの記録は、システム開発の関連本としてではなく、組織マネージメントの教本としての側面からも、おすすめしたい書である。

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