レンタル低調でもなぜ強い? ゲオホールディングスの決算を分析!

2023/07/28 05:55
棚橋 慶次
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「ゲオ」といえば、真っ先にDVDのレンタルショップが思い浮かぶ。実際に利用したことのある読者も多いだろう。時代は変わり、動画全盛の時代にあって果たしてゲオは生き残れるのか……そんな心配は杞憂だった。3R(リユース・リサイクル・リデュース)の波に乗り、ゲオホールディングス(愛知県/遠藤結蔵社長:以下、ゲオ)の業績は好調に推移している。本稿はゲオの2023年3月期決算を切り口に、リユース・レンタルビジネスの動向と同社の戦略について検証する。

ゲオのリユースショップ「スーパーセカンドストリート金沢示野店」の外観

レンタルからリユースにシフト

 ゲオホールディングスは創業以来、CD・DVD・ゲーム・書籍のレンタルおよび販売、ゲームソフトの買取再販売といったビジネスを主体として、30年間にわたり事業を展開してきた。

 同社は近年、新規事業であるリユース事業を急速に拡大している。その筆頭が、古着衣料を取り扱う「2nd STREET(セカンドストリート)」だ。最近は近所でセカンドストリートの店舗を見かけるようになったという人も多いだろう。それもそのはず、店舗数 は803とゲオ業態(1089)に迫る勢いだ(2023年3月末時点、フランチャイズ・代理店を含む)。

 最新の通期はどうだったのか。2023年 3月期の売上高は3773億円で、対前期伸長率は12.7%増と2ケタ台に乗せている。ちなみに売上高は4期連続で過去最高を更新した。 

 商材別に業績を見ると、「Netflix」をはじめとした動画配信サービスが存在感を増し、レンタル市場がシュリンクする中、レンタル商材は対前期比14.1%減と大きく落ち込んだ。一方、リユース事業は衣料・雑貨商材が同17.2%増、ゲームソフトなどの「メディア」が同21.2%増と大きく伸びた。このほか、「Playstation5」をはじめとしたゲーム機などの新品販売も同14.1%増と好調だ。

 一方、 収益性は売上ほど順風ではないようだ。2023年3月期の営業利益は、対前期比29.9%増の106億円だった。前々期から続いての増益となったが、その前は2期連続で大幅減益となっている。ちなみに2019年3月期の営業利益は156億円 で、現状の利益水準は当時の3分の2程度にとどまっている。

 売上の伸びが利益に結び付かないのはなぜか。まず売上高原価率は、58.4%(2019年3月期) から62.2% (2023年3月期)と3.8ポイントも増えている。原価の安いレンタル商材が減り、原価率が高いリユース商材が増えたためだ。この間に売上高は847億円(対19年3月期比28.9%)も増えたのに対し、粗利益高の増加は207億円(同17.0%増) の伸びにとどまる。

 一方で固定費的な性格の強い販管費は、258億円(同24.2%増) も増えている。リユース店舗の出店に伴う家賃増に加え、人件費・水道光熱費などのコストプッシュ要因が重なったかたちだ。

 つまり、リユース事業への注力は消費者のニーズをとらえたという面で成功といえるかもしれないが、収益面では業務オペレーションの改善による販管費コントロールや原価率改善といった課題を残す格好だ。

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