セブン&アイ1Q決算増益でも喜べない、頼みのセブンーイレブンが抱える3つの課題

椎名則夫(アナリスト)
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セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)といえば、沖縄への初出店という明るいニュースがあったものの、24時間営業問題、食品廃棄ロス問題、そして7payのセキュリティ問題など気がかりなニュースの方が話題になっているように感じられる。2019年3-5月期決算の結果をもとに分析し、同社の課題、とりわけ利益の大半を創出するセブン-イレブン・ジャパンの抱える問題点について解説したい。

注目集めた四半期決算発表
まずは面目を保つ数値に

 セブン&アイは7月4日、注目の2019年3-5月期の第1四半期決算を発表した。結果としてみれば、利益の進捗が市場の期待を上回って、株価は発表後上昇している(7月4日終値3718円→7月12日終値3867円)。しかし株価のポジティブな反応とは別に、中身を紐解くと経営課題の解決は正直これからという印象が拭えない。そこで決算数値をおさらいしながら、私が感じる同社の悩ましさについて述べてみたいと思う。

 まず数値を確認したい。グループ売上高は2兆8948億円(前年同期比+1.5%増)、営業収益1兆5964億円(同▲0.2%減)、営業利益903億円(同+4.6%増)、経常利益888億円(同+4.6%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は520億円(同+21.5%増)という内容で、ここに示した3つの利益はいずれも第1四半期として過去最高を達成したとのことだ。営業利益の牽引役は同社の基幹事業である国内コンビニ部門と海外コンビニ部門であり、コア事業の堅調さを改めて確認できる数値で面目を保った形である。

 しかしこの数値で安心できるのか。読者の方はご承知かとも思うが、改めて気になる点を挙げてみたい。

セブン-イレブンの増益は
過年度の新店の利益寄与頼みだった

 利益牽引の筆頭が国内コンビニ事業であると述べたが、セブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)の損益分析を紐解くと、過年度の店舗数増加の利益寄与が+52億円増と圧倒的に大きい。既存店売上高は計画未達で利益貢献は小さく、粗利率の改善効果も限定的だ。出店抑制による経費削減効果もあろう。要は店舗数増加による貯金を経費抑制で守った形である。

 ここで私が気になるのは今後のことだ。セブン-イレブンは現在出店を抑制し総店舗数を大きく伸ばさない計画である。出店が減速すれば収益の牽引役は既存店の売上向上と荒利率改善に自ずと移行する。しかしここには宿題が残されている。

課題1 既存店客数は大丈夫か

 どうしても気になるのは、弱含みの既存店客数だ。

 セブン-イレブンの決算説明資料をベースに、本稿執筆時点で発表済みの2019年6月までを含めると、直近25ヶ月のうち、既存店売上高が前年同月比を上回ったのは21ヶ月と健闘している。しかし客数が前年同月比を維持ないし上回ったのは4ヶ月に過ぎず、21ヶ月は客数が減少している。

 「客単価は着実に上昇していることから過度な懸念は不要」という考え方もあるだろう。ファミリマートやローソンも「客数減、客単価上昇」という同じトレンドにあるためSEJだけの現象ではないとも言える。

※ローソンは株式会社ローソン単体
※ローソンは株式会社ローソン単体

 しかし、それでもセブン-イレブンの客数はここにきて減少に拍車がかかっているように見え、ファミリーマートやローソンでは客数減少に歯止め傾向がうかがえるのとは対照的だ。例えば、SEJの客数は2018年3-5月期は対前年同期比▲0.7%減に対して2019年3-5月期は同▲2.0%減となり、2019年6月は同▲3.8%減となったが、ファミリーマートはそれぞれ▲2.2%減、▲0.5%減、▲0.8%減と推移している。客数減を客単価上昇で補う構造がいつまでも続くとは限らないだけに、このトレンドはどうも気がかりだ。

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当面の集客戦略は、新レイアウトの導入加速頼み

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