新店・ヤオコー東松山シルピア店で鮮魚専任の接客係を配置したねらいは!?

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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SM各社はお客との接点確保に注力

 近年、日本では多くの企業が人手不足に悩まされており、小売業もその例外ではない。にもかかわらず、人手をかけてお客との接点確保に注力するSM企業は少なくない。

 ヤオコーは、以前から多くの店舗に「クッキングサポート」を設けている。同コーナーでは、売場で提供している旬の素材を使用したメニュー提案や調理の実演を行う。地域住民との交流の場にもなっており、お客から得た情報や要望は売場づくりや品揃えに生かされている。

ヤオコー店内のクッキングサポート
ヤオコー店内のクッキングサポート

 茨城県を中心に関東圏でSMを展開するカスミ(茨城県/石井俊樹社長)も、メニュー提案や食の情報提供を行う「クッキングコミュニケーション」を売場に配置している。同社の最新店舗「フードスクエアカスミ水戸西原店」(茨城県水戸市:19426日開業)のオープン会見で、石井社長は「セルフレジの導入などで省人化が進み、お客さまとの接点が少なくなっている。地域住民との交流のためには、会話の機会は必要だ」と話していた。

 サミット(東京都/竹野浩樹社長)では、約4年前から店舗に接客専任の「案内係」を配置している。案内係の業務は、売場の案内から要望の聞き取り、買い物のサポート、お客との日常会話に至るまで多岐に渡る。サミットは案内係を通してお客との接点を確保し、期待以上の接客を提供することでサミットのファンを増やすことをめざしている。

 人手不足に苦しみながらも、SM各社が人手をかけてお客との接点確保に取り組むのはなぜか。理由の1つとして、お客のニーズをより正確に反映させた売場づくりを行い、顧客化を進めて客数増につなげるねらいがある。

 現在、SM業界を取り巻く状況は厳しい。人口減少が続く中、コンビニエンスストアやドラッグストアなど、食品を扱う異業種との競争が激しさを増している。さらに10月以降は消費増税により、(食品自体は8%のままとはいえ)消費が落ち込むことも予想されている。

 このような状況の中でお客に選ばれる店をつくるためには、お客が求めるものを正確に理解していなければならないのである。お客との会話を通じて意見や要望を聞き出すことで、それらを店づくりに生かすことができる。加えて、店側から積極的にメニュー提案や情報発信を行うことで、お客に付加価値を提供することができ、それが他店との差別化にもつながりそうだ。現に約4年前から案内係の取り組みを続けてきたサミットは、SM各社が客数減に苦しむ中、193月期では既存店客数増加を達成している。

 ヤオコーでも同様のねらいがあると思われるが、ではなぜ、鮮魚売場だったのだろうか? 魚は肉や野菜に比べて調理のハードルが高く、下処理の手間もかかる。しかし、調理の仕方やコツがわかれば魚料理にチャレンジしたいと考えるお客も少なくないだろう。ヤオコーはそのようなお客の需要に応え、鮮魚売場に専任のお客さま係を配置したのではないだろうか。

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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