ジャパニーズウイスキーはスーパーマーケットで買え!?
8割減のトラウマ
しかし国産のプレミアムクラスの流通量は減っています。かつては「山崎10年」や「響12年」のようにエイジごとに商品化されるのが一般的でしたが、もはや一昔前です。「●●12年」とは、最低でも12年寝かせた原酒だけで構成した商品のことです。そのような制約での安定供給は困難と、多くの国産エイジド品が終売になりました。
もともとノンエイジ商品は、熟成期間の縛りをなくすことで商品設計の自由度を高め、リーズナブルなプレミアムウイスキーとして10年代前半に登場しました。ところが供給の逼迫により、かつてのエイジド品並みの値段で、しかも希少なことは前述の通りです。
このような事態を招くほどの原酒不足が、なぜ起こるのでしょうか? ウイスキー原酒は熟成に時間を要するといっても、それは計画性の問題のように思えます。きちんと将来を見越して仕込んでおけば・・・、と言いたいところですが、ウイスキーほど将来を見越すのが難しい酒類はないかもしれません。10年以上も原酒を寝かせるとして、そんなに先の需要予測は困難です。
ましてウイスキーの消費量については、歴史的に恐ろしい経験があります。1983年をピークに、07年までの四半世紀で消費量は2割に落ち込みました。2割減ではありません。8割減です。この現象を古生物学者なら「大量絶滅時代」と名付けるでしょうし、軍事史家なら「壊滅」と表現するでしょう。そうした時代を経たからこそ、今の原酒不足があるのです。
新店オープンは、お祭りです
今では希少かつ高嶺の花のノンエイジ品が、新規オープンのスーパーマーケット店頭には棚いっぱいに並びます。それも発売当時のお値段で。ここ1、2年の傾向ですが、初めて気付いたときは目を丸くしたものです。
すべての新店でそうとは言い切れませんが、チェーン展開している多くの店で広く確認しています。チラシにも掲載されません。お一人様一点限りの条件付きですが、夕方には完売します。そりゃそうです。
国産プレミアムの放出は、新店オープンに花を添える取引先のはからいでしょう。スーパーマーケットに限ったことではありませんが、オープンセールはその店で最大最強のお祭り企画です。ただ安いだけではありません。オープンセール後には見かけなくなるような、例えば松阪牛だったり、毛ガニだったりが並ぶこともあります。
スーパーマーケットといえば日常普段の買物をする場ですが、オープンだけは違います。まさにお祭りで、ウイスキーに至っては「時間旅行した?」と錯覚しそうなミラクルだって起きます。