海外でスイーツに使われる「お米のリキュール」はあの調味料!和のオーガニックが来ている

兵藤雄之
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世界に広がるオーガニックみりん

40年も前から、海外のオーガニックマーケットに「Mikawa Mirin」を輸出してきた角谷文治郎商店
40年も前から、海外のオーガニックマーケットに「Mikawa Mirin」を輸出してきた角谷文治郎商店

 海外ではオーガニック市場が広がりを見せている。長寿法を説く「マクロビオティック」の世界では、砂糖や塩化ナトリウムの使用が否定され、穀物由来の甘さとして「みりん」が浸透。「みりん」では通じなくとも、インターネットから「Mikawa Mirin」と入力するだけで、海外と簡単につながることができる。

 いまから40年も前から、海外のオーガニックマーケットに「Mikawa Mirin」を輸出してきたのが、1910年(明治43年)創業の角谷文治郎商店(愛知県/角谷利夫社長)だ。その販路は北米、EU、中近東、豪州、ニュージーランドに広がっている。

 同社では、同業が製造コスト削減のため醸造用アルコールや醸造用糖類の使用に走る中、「もち米、米麹、本格焼酎」のみを原材料にみりんの製造販売を続けている。

 同社みりんの価格は、他社同等品の2倍近くになる。その商品が日本で注目されるようになったのは、2011年の東日本大震災後の原発事故により、食の安心・安全への関心が高まり始めてからだ。海外のオーガニックマーケットでは当たり前のように求められる、食品安全国際規格の「ISO22000」および、食品安全のガイドラインである「HACCP」をいち早く取得、2000年には日本でのオーガニック認証の取得も済ませていたこともあり、「もち米、米麹、本格焼酎」だけで製造されるみりんとして注文が集まるようになったという。

 このところは、海外市場の開拓にあらためて力を入れている。

「オーガニックマーケットにより、海外市場を知っているつもりになっていたが、和食ブームのなかでのニーズには応えられていなかった。それに気づいて、フレンチの世界で通用する調味料をめざすことにした」(角谷利夫社長)

 ジェトロ(日本貿易振興機構)のサポートでパリでの商談会にも参加、「Mikawa Mirin」を「お米のリキュール」として訴求をすると、たちまち需要の開拓につながった。フランスではチョコレートに使われるようになり、それを知った世界を舞台に活躍する辻口博啓シェフは2019年の新作ショコラに同社の「三州三河みりん」を使用したという。

■角谷文治郎商店
http://www.mikawamirin.com/

 

 

 味噌、醤油、みりんは、日本を代表する醸造食品だ。今回取り上げた3社は、原材料や麹菌をはじめ自然の力に依存した昔ながらの伝統的製造法を守っている。しかし、自然と共存しコストと時間を要するその製造法は、時間とコストを抑えていかにパフォーマンスを上げるかを求める現代の風潮とは、良くも悪くも、明らかに真逆を行く動きである。

 だからこそ、彼らは、「オーガニック」という海外からの評価が集まる世界に商品を投入したのではないか。“海外の目”というその威を借りて、(外からの評価に弱い)日本国内での再評価、原点回帰への気づきを促しているのかもしれない。

 

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