ジェンダー、暴力、言葉…… 社会が漂白されるなかで小売業はどう変わるべきか?

坂口 孝則(未来調達研究所)
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ベーカリーショップのイメージ
社会が「漂白化」されていくなかで、小売業はこれまでと異なる戦略を打ち出す必要があるかもしれない(写真はイメージです)

「商売」と「ジェンダー」

 「トラック運転手と保育士の夫婦がいる」

 こう聞いたとき、自然と頭の中にはトラック運転手の男性と保育士の女性が浮かんだのではないだろうか。しかし実際には逆のパターンも当然ある。運転手が女性で、保育士が男性。この場合、少なからず驚く人もいるかもしれないが、われわれはそれだけ、ジェンダーに関する思い込みにとらわれているのだ。

 私とて例外ではない。先日、テレビ番組に出演した際、「コロナ禍で書斎を欲しがる男性が増えています」と口にした瞬間、言い直した。「男性に限りませんね。男性にも女性にもテレワークをしている人はたくさんいますから」と。

 男女の性差は確かにある。しかし、決めつけは反論を招くことになる。もしかすると、私(40代)よりも上の世代の方を中心に「そこまで気を遣わなくても」と思われる方もいるかもしれない。しかし、メディアだけではなく、この世の中で商売をして生きていくのであれば、男女平等を徹底的に意識したほうがいい。

 私が某企業で働いていたころ、米国からやってきた社員と歩いていると突然驚きの声をあげた。その先には、中年の“おっさん社長”が、女性社員に取り囲まれながら満面の笑みを浮かべるという、当時はありがちな企業ポスターだった。しかし性差別に厳しい米国から来たその同僚にとっては、女性を商品として見るセクハラ以外の何物でもない問題作に映ったのだ。

 ポスターの中の社長の笑顔からは、そんな気づきは一切感じられない。しかし米国では、そのポスターの存在だけでボイコットにつながる可能性もある。

 一部の人にとっては、社会の現実を無視した表面的な平等主義に見えるかもしれない。しかし本音と建前の議論は置いておいて、私たち商売人は現実に追随する必要がある。

“漂白化”する世界で小売は何をすべきか

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