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サンエーPARCOを迎え撃つイオンモール沖縄ライカム 食品売場レポート

20196月、沖縄小売最大手のサンエー(沖縄県/上地哲誠社長)は、百貨店大手のJ.フロント リテイリング(東京都/山本良一社長)傘下でファッションビルを運営するパルコ(東京都/牧山浩三社長)と協業して「サンエー浦添西海岸PARCO CITY」(沖縄県浦添市:以下、サンエーパルコシティ)をオープンし、業界内で注目を集めた。しかし、県内にはすでにサンエーパルコシティと同規模の大きさを誇るショッピングモール「イオンモール沖縄ライカム」(沖縄県中頭郡北中城村:以下、イオンライカム)がある。サンエーパルコシティの食品売場は総菜に注力したほか、地元商品とともに高品質な商品の品揃えを強化することで差別化を図っていた。その一方、イオンライカムの食品売場はどのような取り組みを行っているのか。本記事では、オープンから約5年が経過しようとしている同施設の食品売場の現在の売場づくりを中心に解説する。

サンエーパルコシティの食品売場についての記事はこちら

イオンモール沖縄ライカム

“沖縄リゾート”を体現した巨大商業施設

 那覇空港からクルマを約40分走らせると、まるで巨大なリゾート施設のような建物が見えてくる。屋根は沖縄の伝統的な家屋に見られる「赤瓦」をイメージしたデザイン。駐車場内ではヤシやガジュマル、デイゴなどの南国ならではの木々が風に揺れ、入口には沖縄で古くから伝えられている魔除けの守り神「シーサー」の像が立っている。“沖縄らしさ”が前面に打ち出されたその雰囲気は一見するとホテルを彷彿とさせるが、ここは154月に開業したショッピングモール「イオンライカム」だ。

 同施設には、現在約240店舗のテナントが入居している。イオンライカム全体の運営を統括しているのは、国内小売最大手イオン(千葉県/岡田元也社長)傘下のイオンモール(千葉県/吉田昭夫社長)。施設内にある「イオンスタイルライカム店」は、イオン琉球(沖縄県/佐方圭二社長)が運営している。

イオンリカーの売上高構成比は既存店の約2倍!

 イオンスタイルライカム店は、総合スーパーとして食品や化粧品、医薬品、衣料品、生活雑貨などを幅広く取り扱っている。売場は建物24階のフロアの一部で構成されており、合計の売場面積は約6000坪。2階が食品と化粧品・医薬品、3階が衣料品と生活雑貨、4階が子供用品売場となっている。

 このうち食品売場のアイテム数は約9500アイテムで、売場面積はイートインスペースを含め約1800坪となっている。そのなかでとくに好調なのが、県内最大級の大きさを誇るイオンの酒類専門店「イオンリカー」で、地元住民だけでなく観光客からの支持も高いという。

 売場では琉球名物の泡盛を多く品揃えしているほか、高級なワインやウイスキーが外国人観光客に好評だ。ときには80万円もするようなワインのセットが売れることもあるという。食品売場に占めるイオンリカーの売上高構成比は既存店で約78%だが、イオンスタイルライカム店では約15%とほぼ2倍となっている。

イオンリカーでは泡盛を中心に高級なワインやウイスキーも品揃えしている

店内の植物工場で栽培した野菜をサラダとして販売

 イオンスタイルライカム店独自の取り組みとして、とくに注目したいのが館内に植物工場を設置している点だ。周知のとおり、沖縄県は台風が多く夏場は十分な量の農作物を確保するのが難しい。そのため、イオンスタイルライカム店では商品の安定供給をめざし、食品売場内にあるカフェテラスそばの植物工場でベビーリーフなど葉物の野菜を栽培。パック詰めしたサラダとして店内の青果売場で販売している。イオンスタイルライカム店のほか、「イオン那覇店」(沖縄県那覇市)にも商品を供給しており、週に約800900パック生産している。

青果売場では、カフェテラス横の植物工場で栽培した野菜をパック詰めしたサラダを販売している

 食品売場では、各カテゴリーで沖縄県産の地元商品を販売しているのも特徴だ。その割合は時期にもよるが食品全体の約23割を占めている。精肉売場では県産の「山原(やんばる)若鶏」、総菜では沖縄名物のサーターアンダギーやタコライス、アイスでは沖縄県民に人気が高いブルーシールの商品を販売するなど、売場各所に地元商品が差し込まれている。

沖縄県で人気のブルーシールのアイスクリーム

20年中には新たなデリカセンターが稼働予定

 イオン琉球は店内作業の軽減を図るためプロセスセンター(PC)を積極的に活用しており、アウトパック比率向上に努めている。イオンスタイルライカム店では、鶏肉の約9割がPCから供給されているとのことだ。総菜でもPCでの製造に注力しており、現在沖縄本島南部に2カ所あるデリカセンターに加え、20年中にはイオンスタイルライカム店のある本島中部でも新たに1カ所稼働させる予定となっている。イオン琉球は地元商品の強化などによる地域密着と並行し、店舗作業を効率化する体制の構築も進めているようだ。

 

「ダイヤモンド・チェーンストア」2020年2月1日号では、サンエー浦添西海岸PARCO CITYとイオンモール沖縄ライカムの詳細をレポート。両施設の食品売場のほか、ショッピングモール全体の戦略についても掲載します。お楽しみに!