アングル:任天堂が国内初の直営店、「非ゲーマー」との接点探る
[東京 19日 ロイター] – 任天堂が、国内で初の直営店を東京に開設する。マリオなど自社のIP(知的財産)への認知を高め、ゲームに関心のない「非ゲーマー」との接点を探る構えだ。自社のプラットフォームに誘引できれば、主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の販売にも貢献し得る。
任天堂は19日、渋谷パルコにオープンする「Nintendo TOKYO」を報道陣に公開した。マリオやゼルダ、スプラトゥーンといった、任天堂のゲームに登場するキャラクターの関連グッズが所狭しと並ぶ。巨大なスクリーンでゲームを楽しめるコーナーもある。これまで直営点は米NYにはあったものの、日本では初となる取り組みだ。
近年の任天堂は、ゲームファンだけでなく一般消費者をも見据えたIP戦略に力を入れている。来年には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で「マリオカート」などのアトラクションを盛り込んだ任天堂のテーマエリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」をオープンする。22年には「スーパーマリオ」のアニメ映画も公開される予定だ。
任天堂の古川俊太郎社長は、10月末の決算会見で「ゲーム機以外の場でも、生活空間に近い身近な場でも、キャラクターやゲームに触れてもらう機会を作りたい」と述べた。
<スマホゲームにもIP戦略>
スマホ向けゲームへの参入も、同様の文脈から捉えられる。任天堂は「Miitomo」を皮切りにスマホゲームに参入。スマホは多くの消費者が保有しており、ゲームをしたことのない人が新たにゲーム機を購入するより、ゲームに触れるハードルが低い。
金融市場では、スマホゲームの事業としての成否だけでなく、非ゲーマーへのアプローチの側面も注目されている。大和証券の鈴木崇生アナリストは「任天堂にとって、自社のプラットフォームの普及拡大が絶対的なミッションだ」と指摘する。
スマホゲームでは、米アップルの「アップストア」や米グーグルの「グーグルプレイ・ストア」といった配信サービスを利用する際に支払う手数料が負担となる。自社プラットフォームに送客できれば利益が高まるという。
スマホゲームから自社プラットフォームへの送客は、過去にもあったとファミ通グループの浜村弘一代表は指摘する。2016年11月発売の3DS向けソフト「とびだせ どうぶつの森 amiibo+」は、週あたり販売数が発売1年後には3000本─4000本に落ち着いていた。それがスマホ向けに「どうぶつの森ポケットキャンプ」が発売された17年11月第4週には1万2000本近くへと、一気に跳ね上がった。
<鍵は「スイッチ」への誘導>
非ゲーマーの受け皿となるのが、2011年の発売から約9年を経過した「3DS」だ。販売台数はピーク時からは下降線をたどっているが、古川社長は「今後も販売を継続していく」と語った。サイズが小さく携帯しやすい上、価格面でも安い「エントリー層向け」(古川社長)だからだ。
3DSは開発費などの償却を終えてコスト面で身軽。相対的に低価格で、ゲームに関心のなかった消費者にとっても購買行動のハードルが低い。
3DSで新規需要を取り込んだ後、スイッチに送客するといったサイクルが軌道に乗れば、任天堂が狙うスイッチの長寿命化にもつながり得る。古川社長は10月の会見で、3DSでエントリー層を取り込んだ上で「新しいゲーム体験を求めている人には、スイッチファミリーの魅力を伝えて販売を拡大したい」と語った。
15日は、スイッチ向けのポケモンの新作を発売した。同じポケモンのIPを利用して16年に配信が開始されたスマホ向けゲーム「ポケモンGO」はゲームに関心のない成人の間でも人気となった経緯があることから、ファミ通の浜村代表は「ポケモンGOから(スイッチへ)の送客が始まるかもしれない」とみている。