「顧客体験価値の最大化」を創造するスーパーマーケットの革新

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「顧客体験価値の最大化」を創造するスーパーマーケットの革新 リアル店舗とデジタルをシームレスに融合しサービス提供の高度化へ
カスミ満行氏

株式会社カスミ 取締役執行役員 営業戦略担当(兼)
SCM/ERP改革プロジェクトリーダー 兼 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社出向
満行 光史郎 氏

 

お客様に「豊かな時間」「繋がり」の価値を提供

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)は、「Retail4.0」の世界観の中で、人と人のビジネスを前提に次の10年も成長し続ける新業態を2019年以降に定義した。具体的には「突き抜け鮮度」「商品との出会い」「エンリッチー豊かな時間創出」「繋がり創出」の4つの価値を提供する。これらを必須の提供価値としてお客様サービスを構築することが、これからの新業態のあり方だ。

USMH DX | DXフライホイールモデル

デジタルに対してどのように取り組んでいくかというのが、「DXフライホイールモデル」である。フライホイールは円盤であり、回転力で回り続け推進力がさらに加わることで加速していく。まず「商品との出会い」「突き抜け鮮度」というモノの感動からスタート。それが利用客数増につながり取引先が増え、商品の品質・品揃えも充実しモノの感動が加速する。
第1のホイールは、利用客数のトラフィックデータを集めてデジタルプラットフォームを育てる。そこから新技術や新サービスを開発しスマートショッピングや顧客接点を創出する。そして「豊かな時間」「繋がり」というコトの感動につながる。

さらに我々がRetail as a Service(RaaS)と呼ぶ外部へのサービス提供である第2のホイールに発展させ、収益につなげる。その収益が第1のホイールをさらに加速することになる。

買物体験のルートは1000通り以上のカスタマージャーニー実現へ

私たちが目指す顧客体験は、スーパーマーケットはもはやモノを買うだけの場所ではない。買物体験を通して楽しんでもらう場所である。それを具現化したのが今年初めにつくば市に研究学園店とつくば並木店の2店を開設したBLANDEである。BLANDEの語源は「混ざり合う」であり、「何か」と「何か」が混ざり合うことで新しい価値が生まれることをフォーマット・コンセプトとした。店舗運営組織も変革し部門縦割りを排除し、従来のPBとは異なる商品MD開発上のプラットフォームとして独自ブランド商品「MiiL」を開発した。さらにお客様から「私のお店」と思ってもらえるように満足度向上を図り、従来のイートインとは異なるCafé&Dineスペースも設けた。

リアル店舗とデジタルを融合する我々の取り組みは、店内の買物を高度化するだけでなく、お客様目線で買物体験のルートを増やすことにつながる。19年段階でカスミの選択場所は店内、ネットスーパー、移動販売場など屋外の3ルートあり、ピッキングから商品の受け取りまでは11ルートだった。多少の分岐はあっても、基本的には一方通行になっていた。

カスタマージャーニーはO2OからOMOへ

それが20年から21年以降はスキャン&ゴーを起点としアプリ注文やEC宅配、無人店舗、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)などを始めており、買物ルートは28通りまで拡張している。ただ各チャネルをまたがるルートは、まだこれからという状況。さらに店内や屋外など購買制限を設けないサービスの開発・実装を行っていく。23年には1000を超えるカスタマージャーニーを実現する。

デジタル化はお客様、従業員エンゲージメント向上が目的

デジタル戦略 - UX最大化のためにデジタルで変えること

デジタル戦略で目指すのは顧客体験の最大化、従業員のロイヤリティの向上を目指して、5つのデジタルサービスを投入し複合的にデジタルの開発にあたっている。中でもignicaブランドはU.S.M.Hのデジタルブランドと位置付けており、お客様、従業員のエンゲージメントを高めることを目的にスキャン&ゴーや店舗のデジタル化、店内の接客アプリの開発を進めている。また、データドリブン経営を進めるためにPower BIを活用した購買データの分析、可視化、オープンソースERPによるリアルタイム在庫の可視化などを図っている。

コア機能となるのがスキャン&ゴー。20年3月から運用を開始して、6月にはオンラインデリバリーも別アプリで開始した。この2つの機能を統合アプリとして22年1月から展開を開始した。アプリには独自に開発したAIリコメンド機能を追加し購入指標が向上した。この機能はアジャイル開発を進めており、随時機能強化を図っている。

デジタル化の拡大に伴うシステム開発や、新商品・新サービスの開発は、もはや自前で全てをまかなうことはできない。これから必要なのはオープンイノベーションであり、そのため外部の企業と協働と共創を繰り返す、オープンイノベーション・ラボ「AKIBA RUNWAY」を展開していく。

※このレポートは2022年4月22日に配信した「DCSオンラインカンファレンス」の講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです

記事執筆者

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