多様な価値観への対応を進める巨艦・阪急うめだ本店の“大仕掛け”とは
2023年に自然共生型売場も開設
阪急うめだ本店は、事業戦略として、①グローバルに通用するスペシャリティコンテンツの拡充、②オンライン・オフラインの区別のない価値ある顧客体験(ジャーニー)の提供、③サステナビリティ(持続可能性)の推進を掲げている。D2Cブランドをリアルに体験できる売場は、②に該当すると言えるが、価値観の変化に対応した、もう一つのMDの新機軸が③を具現化する売場だ。
「特に今の若い世代は物心ついたときから、カーボンニュートラルなどの社会課題に直面しているためなのか、サステナビリティへの意識が高い。若いお客さまにも来店いただくには、サステナビリティへの対応が不可欠と言える」と、佐藤氏は強調する。
その一環として、阪急うめだ本店は2023年をメドに、サステナビリティをテーマにした、500坪クラスの新たな売場をオープンする。自然共生型のブランドをはじめ、ジェンダーレスやエイジレスなどを切り口にした、新しい価値観の売場を構築する予定だ。自然派の化粧品や生活雑貨、食品といった商品を幅広く揃え、「ライフスタイル提案型の売場としたい」と、佐藤氏は意気込む。
中間層だけでなく、得意とする富裕層向けについても、OMOを進めている。例えば、外商ではコロナ禍以降、遠隔地の個人客向けの新たなチャネルとして、LINEやZOOMなどのツールを使ったパーソナルコミュニケーションを推進。成果を上げているという。
また海外の富裕層向けにも、OMOを加速させる。「コロナ禍でインバウンドの来店は当面見込めない。しかし、中国では2021年、寧波市に10万㎡規模のデパートメントモールをオープンし、30代の超富裕層のファンを獲得しつつある。一方で、中国には4000~5000人の当店のお得意さまもいて、中国人スタッフやネットを介して、ご要望をお聞きし、商品を取り置きしたり、中国までお届けしたりしている」(同)
百貨店の伝統と革新をハイブリッドしたOMOは、百貨店業態の未来形の一つかもしれない。阪急うめだ本店も、2029年の創業100周年に備えて、新しい百貨店のあり方を模索しながら、次の100年に向けた布石を着々と打ち出している。