雑貨専門店に学ぶ若年層をファンにする方法
3COINSのブランド改革
近年、雑貨専門店で驚異的な伸びを見せているのが3COINSだ。19年2月期で193だった店舗数は、24年11月現在で約340へと増加した。コロナ禍の巣ごもり需要で注目を浴びただけでなく、同時期に行ったブランド改革が奏功した。
ブランド改革では20代女性から30~40代の女性にターゲット層を変更した。ターゲット層に合わせた商品や色みを再考した結果、より顧客ニーズをとらえた商品開発につながった。また、明るい緑色だったテーマカラーを、落ち着いた深みのあるグリーンに変更。床材や什器といった内装も、白を基調とするものから木目調やモルタル調の落ち着いた雰囲気の色みへと転換した。
もう1つ、3COINSの躍進を支えているのが商品の鮮度だ。3COINSの1店舗当たりのアイテム数は約3000点に上る。カテゴリーも、アクセサリーからキッチン、インテリア、モバイルアイテムまで幅広く展開しており、大型店舗ではキッズや食品といった新規カテゴリーの拡充も進めている。驚くべきことに、定番アイテムは売上比率の約半分で、毎週投入される新商品は月間で700SKUにもなる。
3COINS事業は今年30周年を迎える。HCをはじめ、住まいにかかわる多くの企業がコロナ特需の反動減で苦しむなか、顧客ニーズを的確にとらえ、急成長を続けている好事例といえるだろう。
ダイソーの3つ目の業態
SPは大創産業が展開する3つ目のフォーマットである。100円ショップ「DAISO」とはまったく異なる世界観の「いいものを、長く使いたい」というニーズに応えるべく、「ちょっといいのが、ずっといい。」をブランドコンセプトとする。
とある大手HC幹部は21年3月にオープンした1号店「渋谷マークシティ店」を視察し、「この業態をうちが先にやるべきだった」と悔しさをにじませながら称賛していた。
SPの立ち上げに当たって、DAISOとは異なるコンセプトのオリジナル商品を新たに約2000アイテム開発する必要があった。社内の全バイヤーに声を掛け、ダイソーの商品開発に携わっている取引先にSPの世界観を表現できるものがあるかどうかという確認から始まった。
出来上がった商品は、DAISOで展開するものと比べて、圧倒的に商品数、色数を抑えたものになった。その代わり、トーンバランスが統一されている。たとえばマグカップとブランケットといった、カテゴリーをまたがるような組み合わせでも、コーディネートしやすい。
1号店がオープンして3年以上を経過し、オリジナル商品は2700アイテムまで拡大した。キッチン回りの雑貨、食器、フレグランスに加え、文具、キャンプ用品、バス用品、ペット用品、グリーン(観葉植物、フェイクグリーン)、シューズケアなども充実を図っている。
店舗数も順調に拡大を続け、24年10月末現在、国内150店舗、海外(シンガポール、台湾)7店舗を展開している。
同業他社より他業態から学ぶ
インテリア雑貨で若年層のファンが多いブランドには2つの共通点がある。
1つはコーディネートの提案である。単品の機能やデザインだけでなく、部屋全体でほかの商品と合わせやすいことがポイントだ。売場でも単に商品を陳列するのではなく、コーディネートを想起させるディスプレーが求められる。
もう1つは商品開発、MDの変化のスピードである。インテリアの流行に合わせて、いつ来ても新鮮な売場になるように在庫回転率を高めなければならない。
インテリアコーディネーターの島ひかる氏は「コロナ禍以降、インテリアのトレンドは変化している。プロのSNSを見て参考にする人や、タイパ・コスパを重視する人が増えてきた」と指摘する。
残念ながら、HCはインテリア雑貨、HFの分野での存在感が低い。しかし、これは裏を返せば若年層のファンを獲得する新たなチャンスともいえる。3COINS、SPのようにここ数年で急拡大しているブランドもある。
HCの同業他社だけでなく、他業態こそ学ぶことが多い。