シチュー市場、秋冬の煮込み料理の定番アレンジメニュー提案でトライアル促進へ

文:石山 真紀(フリーライター・売場研究家)
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シチュールウの金額PI月別推移

ホワイト・ビーフに続く新たな味わいのシチューも

 シチュールウのカテゴリーはハウス食品の「北海道シチュー」シリーズや、エスビー食品の「濃いシチュー」シリーズといった、誰もが知るロングセラーブランドが市場を支えている。

濃いシチュー オマール海老
エスビー食品「濃いシチュー オマール海老」

 またこのカテゴリーは長年、ホワイトシチューとビーフシチューの2大メニューをメーンとし、各ブランドが商品をブラッシュアップさせることで売場を盛り上げてきた。

 しかし近年は厳選した4種のチーズに鶏がらと香味野菜のブイヨンを合わせた「濃いシチュー 4 種のチーズ」、オマール海老のだしを贅沢に使用した期間限定商品「濃いシチュー オマール海老」のように、新たなフレーバーのルウシチュー商品も発売されている。

 今期も新機軸のシチュールウ商品が登場している。

 ハウス食品では大箱ルウシチューとしては12年ぶりとなる新ブランド「休日のシチュー」を発売。大人世代にマッチした新たなおいしさをめざしルウのベースにでんぷんや米粉を使うことで軽やかな味わいに最適化した。

 また〈クリーム〉にはホワイトペパー、酒粕、焦がしバター、〈ビーフ用〉にはオレガノをはじめとした、11種類のスパイス・ハーブを使い、香り高く仕上げている。

「休日のシチュー」〈クリーム〉
ハウス食品「休日のシチュー」〈クリーム〉

 一方、エスビー食品は定番の「濃いシチュー」をリフレッシュした。〈クリーム〉〈ビーフ〉はパッケージを改良したほか、〈4種のチーズ〉は、明治とコラボレーション。「明治北海道十勝チーズ」4種をブレンドすることで、まろやかで濃厚なコクを表現している。

 さらにシチュー以外のアレンジレシピ提案に力を入れており、商品パッケージやブランドサイトで、「濃いシチュー」ならではの味わいを生かした幅広いメニューを紹介している。

新商品やアレンジメニューの訴求を強化し、トライアルを創出

 シチューはこれまで調理時間の長さが最大のネックとされてきたが、メーカー各社は溶かしやすいパウダータイプのシチュールウや、単身世帯やランチ需要にも対応しやすいレトルトタイプのシチューなど簡便・時短を訴求する商品も展開している。

 エスビー食品では料理家・栗原はるみさんとの共同開発によるパウダータイプのルウシチュー「栗原はるみのクリームシチュー」「栗原はるみのビーフシチュー」が好調に推移。今年2月には「栗原はるみ トマトのハヤシ」が発売され、ブランドの勢いが加速している。

 ハウス食品は名店の味わいを再現した人気のレトルト食品シリーズ「選ばれし人気店」から東京・入谷「レストラン 香味屋(かみや)」監修の〈老舗のビーフシチュー〉を発売。

 さらにレトルトシチューブランド「ほっとシチュー」からは、新フレーバーとしてなめらかな口あたりとやさしい味わいの〈コーン〉を発売し、新たなユーザーを獲得している。

 シチューは、青果や精肉といった生鮮品との相性もよいことからクロスMDも仕掛けやすく、買上点数アップにつながる商品として、加工食品売場にとってもなくてはならないカテゴリーのひとつだ。

 カレールウに比べて季節や天候の影響を受けやすいシチューだが、新たなフレーバーも登場しており、家族全員で楽しめる煮込み料理の定番として市場を広げるチャンスはある。とくにレトルトシチューはレトルトカレーのように認知度が上がれば、売上を大きく伸ばすチャンスがあるだろう。

 シチューは長年、クリームシチューとビーフシチューの2大メニューのみを展開してきたこともあり、新フレーバーやアレンジメニューについては消費者にあまり知られていない。

 今後、ユーザーを拡大していくためにも、最需要期である秋冬はエンドや主通路沿いで新商品の露出を増やし視認性を高めるほか、試食販売やアレンジメニュー提案など来店客の気付きとなるプロモーションを仕掛けることで、シチューカテゴリー全体の活性化につなげたいところだ。

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