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最強DS「ラ・ムー」にもインフレの波……“カテゴリー深掘り”で現状打破へ

解説:鈴木 國朗(アイダスグループ代表)
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終わりの見えない物価高、人件費上昇、不安定な為替……。小売業の低価格プライベートブランド(PB)に強い逆風が吹いている。とくに原材料の高騰は深刻で、PBの値上げに踏み切った企業も少なくない。

多くの食品小売が「付加価値型」、あるいは「価値ある安さ」といった方向性を模索する中、低価格に軸足を置くチェーンはどのような商品開発を推進しているのか。西日本ディスカウントの雄、大黒天物産(岡山県/大賀昌彦社長)の商品を調査した。

※本文中の価格はすべて本体価格

低価格の裏にある強固なサプライチェーン

 岡山県倉敷市に本部を置く大黒天物産は、「LAMU(ラ・ムー)」「DIO(ディオ)」などの屋号でディスカウントスーパーを展開する企業だ。中国エリアを地盤に、近畿、中部、九州、四国に店舗網を持ち、グループ全体で220店舗を展開する(2025年5月期中間期末時点)。

 大黒天物産の強みはなんといってもその安さだ。そしてその中で重要な役割を果たすのが、PBの「D‐PRICE」である。公式サイトによれば、D‐PRICEは、徹底した市場調査をもとに、お客の購買意欲の高い商品を検討。

 低価格での販売を前提に協議を重ね、試作を繰り返した末で発売に至っているという。発売後も定期的に商品をチェックし、ニーズや時代の変化を見ながら改良を繰り返している。

 私は長年にわたり、大黒天物産の売場をウォッチしているが、同社のPBの裏側には強固なサプライチェーンの存在を感じる。原材料の調達から製造、仕入れ、在庫管理、物流、販売に至るまでの過程の中で、どこでコストが低減できるのか、最終的に店頭価格を安くするにはどのような企業努力が必要なのか、を常に検討していると思われる。この姿勢、信念こそが同社の独自性といっていい。

 ただ、現在は相次ぐ値上げ、コスト高騰などにより、商品開発の環境が悪化している。厳しい状況下、大黒天物産はどのように低価格を実現しているのか。同社の主力フォーマットの1つ、「ラ・ムー」の売場を調査してみた。

生鮮強化を志向?物価高で品揃えに変化

 今回訪れたのは、大阪市内にある「ラ・ムー北津守店」「ラ・ムー此花店」の2店舗。売場を見て驚かされたのは、以前と比べて生鮮食品と総菜がさらに強化されていた点だ。とくに青果、鮮魚、精肉の生鮮3部門では見た目にも高鮮度な商品を豊富に揃えており、いずれも低価格で提供されている。

 商品の配置も工夫が凝らされ、青果では重点商品である土物野菜を最終コーナーにマグネットとして配置するなど、仮説と検証を繰り返しながら進化を続けているのがわかる。

 精肉では、「メガパック」と記載された大容量商品を揃えており、調査日は800~1000g前後の「輸入牛豚合挽ミンチメガ(牛肉70%、豚肉30%)」をオープンケース最下段で大きく展開。価格も100g88円と安い。

 そのほか「広告の品」として「豪州産・ウルグアイ産 牛肉肩ロースステーキ用」(100g198円)を販売していた。購買頻度の高い生鮮食品と総菜を強化し、客数を上げたいという意図が見て取れる。

 売場中央レジ前は、ラ・ムーではおなじみの段ボールカット陳列による加工食品の催事売場となっている。ただ、こちらのゾーンはナショナルブランド(NB)商品が中心で、D‐PRICEの展開は控えめだった印象だ。

2ℓペットボトル緑茶
本体価格87円の2ℓペットボトル緑茶など、競合を圧倒する安さを追求する「D-PRICE」

 さらにD‐PRICEについて見ていこう。D‐PRICEのラインアップはカット野菜のような生鮮品から加工食品、菓子、日配、飲料と幅広い。いずれもゴンドラエンドなどの目立つ場所で展開されており、単品量販を意識したボリューム陳列もみられた。

 気になったのは、ラインアップの変化だ。今回調査した2店舗では、

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