健康や動物愛護などを理由とする菜食主義は早くから世界の一部で定着してきたが、エコや、サステナビリティの観点からも動物性タンパク質に頼らない植物由来の食品が注目されている。日本国内でも、2020年に代替肉市場が一気に活性化するなど、新たなトレンドが進行中だ。20年~21年の新店の売場から、プラントベースフードの扱い状況を紹介する。
世界的な潮流を背景に国内でも注目度が高まる
「SDGs」というキーワードに注目が集まっている。「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略で、2030年までに世界が取り組むべき目標として15年9月に国連総会で採択された。この目標には貧困や飢餓の問題への対応や、食品ロスなどへの取り組みが盛り込まれている。
世界的にプラントベースフードへの関心が高まったのは、美容・健康面のメリットだけでなく、動物主体の食事から植物主体の食事に変えていくことで、CO2の排出量削減につながるという環境問題や、サステナビリティの向上という側面がクローズアップされてきたからだろう。
日本でも以前から話題になっていたが、最近になって、健康や環境への意識が高まるなかで、植物を原料とする食品への注目が高まっている。
もともと日本の食生活では、主食の米をはじめ、大豆食品やこんにゃくなど、植物由来の食品を幅広く利用してきた伝統がある。肉食主体の欧米とは食生活の基本が異なるため、逆に菜食主義やヴィーガン食への関心度合いもさほど高くなかった面がある。
しかし環境保護や「SDGs」への意識は国内でもますます高まる傾向にあり、食品メーカーや食品スーパーも注目。プラントベースフードは、徐々に売場での存在感を高める方向にある。
とくに20年は、市場が大きく変化した年となった。意識的にプラントベースフードを選んで購入する層は、まだ限定的だと見られるが、たとえば以前から拡大してきた豆乳をはじめとする植物原料を使ったミルクは、バリエーションがますます増えている
また徐々に扱いが広がっていたプラントベースミート(代替肉)は、20年に一気に専用コーナーに集約して展開するトレンドが進行した。コーナー展開は、精肉部門だけでなく、日配や総菜、グロサリーにも広がっている。畜肉と比較してヘルシーで栄養バランスに優れているという認識は深まっているが、近年は味がますます進化改良され、食感や味わいの面でも違和感がなくなってきている。
そのため「各部門における主力商品」としてまでは期待しなくとも、関心層が増えたことに対応し、いち早く選択肢を提供していくという戦略も見えてくる。
さまざまな部門で幅広く導入が広がる
新店の取り組み事例を具体的に見ていこう。「マルエツ船橋三山店」では、売場の随所に「プラントベース」コーナーを設置しており、精肉売場でも大豆ミートを使ったレトルト総菜コーナーを設置している。
「東武ストア新河岸店」では、さまざまなメニューに活用できる素材としての大豆ミートをはじめ、惣菜類などをコーナーに集約して展開する。
「イオンスタイル高知」は、大豆ミートへのトライアルを提案するボードや棚札を掲げて訴求する。
「原信寺沢店」では、こんにゃくをテーマにした商品を集約。麺類やこんにゃくステーキなどを揃え、健康への関心層に働きかけている。
「イオンスタイル有明ガーデン」も、さまざまな部門で大豆ミート関連食品を展開しているが、グロサリー部門では、直接ヴィーガン食としてのコーナー訴求を行う。
また大豆ミートを使った総菜を活用した弁当を展開しているのが、「マルエツプチ本駒込二丁目店」。POPを掲げて注目度を高めている。
「イトーヨーカドー新田店」もいくつかのコーナーを設置しているが、冷凍食品売場にワンプレートの総菜を展開。手軽さや保存性の面でも冷凍食品としてのメリットがある。
また、発芽豆を原料とするコロッケや餃子、春巻きなどを平台で展開しているのが「ライフ東日暮里店」。ボードでも大きく打ち出している。
乳製品については、早くから豆乳やアーモンドミルクなどのプラントベースフードが展開されてきた。
「イオンフードスタイル茨木太田店」では、ヨーグルト売場の中に、「植物性ヨーグルト」コーナーを設置し、視認性を高めている。
同様に「リンコス横浜馬車道店」も、植物性ミルクを集約して展開。ますますバリエーションが増えている豆乳飲料と併せて陳列を行っている。
20年は、プラントベースミートの商品のバリエーションも増加している。ヘルシー志向の納豆や豆腐も増えているため、さまざまなテーマでの店頭訴求の可能性が広がっている。