サッポロ、好調の「99.99」「男梅サワー」に注力、家庭用と業務用の両輪でブランド認知向上へ=連載:深掘りすれば見えてくる「チューハイ編」

室作幸江(ライター)
Pocket

独特のしょっぱい旨さが人気の「男梅サワー」

塩味と旨味が凝縮された “しょっぱい旨さ”を実現した「男梅サワー」。通常の「男梅サワー」のほか、高アルコールタイプの「超男梅サワー」を展開。業務用新商品として「男梅サワーの素」が発売された

 サッポロビールのRTDでもうひとつの主力となっているのが「男梅サワー」だ。同品はノーベル製菓が販売する「男梅」の独特な風味を再現したコラボレーション商品。「男梅」は本格的で濃厚な梅干しの風味が楽しめるキャンディーで、07年の発売以来、多くのファンを持つ。

 「男梅サワー」は、そのこだわりの風味をサワーにすることで、従来のRTDの梅フレーバーにはない塩味と旨味が凝縮された “しょっぱい旨さ”を実現。他のRTDにはない個性的な味わいが受け入れられて、13年4月の限定発売以降、多くのユーザーから支持されている。

 現在はレギュラー品として「男梅サワー」、アルコール9%の高アルコールタイプ「超男梅サワー」の2アイテム、数量限定商品として「男梅ハイボール」や「男梅サワー 追いレモン」等を展開する。

 「サッポロ 男梅サワー」は19年11月、「サッポロ 超男梅サワー」は同10月に商品をリニューアル。梅干しの丸ごとの旨さを閉じ込めた液中粉砕浸漬酒を新たに採用し、こだわり抜いた梅干し感が楽しめるようになった。パッケージは居酒屋系ブランドとしてのイメージをさらに高めるためジョッキデザインをあしらい、「家庭でも楽しめる居酒屋の味」という飲用シーンを訴求する。

業務用・家庭用双方で接点を増やす「クロスシーン戦略」

3月31日リニューアルする「サッポロチューハイ99.99」のキービジュアルと、居酒屋を想起させる「男梅サワー」のキービジュアル

 サッポロビールではRTDカテゴリーの20年事業方針について、消費税増税や酒税改定、消費の二極化といった環境要因より、ビール類からの流入を中心にRTD市場はさらに拡大すると予測。ビール類とRTDを同一フレームとしてとらえ、RTDの食中酒としてのポジション確立をめざしている。

 RTDは家庭用での好調が目立つが、料飲店でもチューハイ・サワー類が伸長。19年の業務用の樽詰サワーは15年比で1.7倍となっている。ただ、料飲店の場合、「レモンサワー」や「焼酎割り」といったメニュー名が中心であり、ブランド名を冠するものは少ない。

 「ビールの場合は、居酒屋でもブランド銘柄がメニューに記載されていることから家庭用と業務用のブランドブリッジが効き、居酒屋から家庭へのスイッチも容易。しかしRTDはトーン&マナー的に家庭用のみの提案が続いていたため、料飲店からのスイッチが難しくなっている」(永井氏)

 そこで同社では2月26日に業務用専用の「サッポロチューハイ99.99樽詰」2アイテムを発売。料飲店や野球場等での飲用体験と家庭での飲用体験をクロスさせ、家庭用・業務用のブランドブリッジをかける「クロスシーン戦略」を打ち出した。業務用ではメニュー名として「99.99」ブランドを出すほか、ブランドロゴの入ったグラスも提供し、ブランド認知を高めていく。

 また「男梅サワー」も業務用に注力しており、居酒屋をはじめさまざまな料飲店でも「男梅サワー」というブランド名でメニュー化されている。2月26日には業務用新商品の「男梅サワーの素」を発売。3倍希釈(アルコール度数5%想定)の1.8L入りで、導入店舗目標を1万店舗に設定している。

 さらに、流通の店頭においても食との連動を強化。「サッポロチューハイ99.99」では「クリアなうまさ with food」をキャッチコピーに、揚げ物やカレーといったさまざまな食とのクロスマーチャンダイジング(MD)を展開していく。同様に「男梅サワー」でも食との連動を強化。居酒屋を想起させるPOPやボードといった販促ツール、消費者キャンペーン等を通じて売場を盛り上げる。

 サッポロビールでは20年のRTD販売計画について、家庭用RTD缶を前年比110.6%の1000万ケース(250ml╳24本換算)に設定。居酒屋の多い横丁や都市部での飲用体験イベントも積極的に開催し顧客接点を増やしていく。同社では家庭用・業務用双方で、食中酒としてのポジションを確立していきたいとしている。

1 2

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態