mitoriz(東京都/木名瀬博社長)は、全国に約40万人の協力モニターを擁し、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POBデータ)」を有している。月間1000万枚のレシートを収集し、リアル消費者購買データベースとしては国内最大級の規模となる。(提携サイト含める)
このPOBデータと協力モニター(以下、POB会員)へのアンケート調査を活用すれば、消費者から見た小売りチェーンの実態を明らかにすることができる。本連載では毎回、業界で関心の高いテーマを設定して独自調査を実施し、その結果をレポートする。
連載第13回は、サミット(東京都/服部哲也社長)にクローズアップ。同社は2024年3月期第2四半期決算(4~9月)では売上高で過去最高を更新。既存店売上高(対前年同期比)も5.3%~8.1%増と業界でも高い水準で推移している、好調の要因は何か。POBデータからその理由に迫った。
ポイントやお得なサービスが
群を抜いて高スコアに
今回は、「サミット」と同じく首都圏で店舗展開する「ライフ」(首都圏の店舗)と「ヤオコー」の3チェーンを対象に調査した。まずは、それぞれのメーン利用者に、そのチェーンを「支持する理由」を尋ねた(図表1)
その結果、サミットは2チェーンとの比較では、商品に関する評価は高くなかったものの、「ポイントやお得なサービスがあるから」のスコアが34.8%と、抜きん出て高かった。
ポイントについては、同社ではお買い上げ金額200円(税抜)ごとに1ポイントを提供。ポイント倍率アップセールを実施するほか、単品ボーナスポイント企画も実施している。コメントでは「割引や特売、ポイントアップなどのイベントが豊富」「曜日により特売商品が変わるのが良い」などの声が挙がり、販促活動が利用者にお得感を与え、強みになっているようだ。
接客や店の雰囲気
好評の背景にあるビジョン
もう1つ、他社よりも評価が高かった項目が、「店員の接客がよい」(12.1%)だ。「店の雰囲気もよく店員さんが親切で明るい」「案内係のスタッフさんがとても気さくで、お店全体を明るくしてくれる」といった声が散見されたことに注目したい。
サミットは現在、めざすべき店づくりのビジョンに「生きる糧(かて)を分かち合う店」を掲げている。「糧」とは、「食糧」や「食物」以外に「精神や生活の活力の源泉」などの意味を持っており、地域住民にとって心の支えやパワーの源にもなれるような店を追求していきたいというものだ。これを実現するべく、店舗ごとや従業員一人ひとりが考えて行動できる組織づくりを推進。サミットの服部哲也社長は「この取り組みは着実に組織全体に広がり、これが既存店業績の好調にも寄与している」と述べている。この取り組みが、「接客がよい」や「店の雰囲気がよい」のスコアを高めることにつながっていると考えられる。
他社に差をつけたのは
「決済方法の豊富さ」
次に、3チェーンの利用者ごとに、下記7つの項目で「満足度調査」を行った。(図表2)
サミットについては、満足度で80%以上を獲得した項目数がいちばん多かったこと、そして「決済方法の豊富さ」(86.6%)と最も高い評価を得ていることに注目したい。
サミットは2023年6月から独自の「サミット電子マネー」を開始。現金でチャージ可能な電子マネー一体型ポイントカード「サミットカード」を導入するとともに、アプリにも電子マネー機能を追加。決済方法の選択肢を広げている。また、23年は積極的に店舗改装を進めてセルフレジの設置を進めた。これらの投資が「決済方法の豊富さ」の評価に影響を与えたと考えられる。
サミットは10種類もの
QR・電子決済に対応!
続いて、サミットの「決済方法の豊富さ」の満足度が高かった要因を深掘りするべく、POB会員が投稿したレシートデータから利用者の決済方法を比較した(分析期間:2023年2月~2024年1月)(図表3)。
調べると、サミットは「PayPay」「楽天Pay」「d払い」など、QR・電子決済を10種類から選べる。一方、他の2チェーンは、同様にスマホ決済は利用できるものの、ライフでは3種類、ヤオコーは独自のスマホ決済「ヤオコーPay」のみと限定的である。
このようにQR・電子決算において幅広い選択肢を提供していることも、「決済方法の豊富さ」の高評価につながっていると想定される。
これらの調査結果から、サミットは「接客のよさ」「店の雰囲気」と、「決済方法の豊富さ」をはじめとした利便性の高さが評価を得ており、同社直近の好業績を後押ししていると考える。業態を超えた競争が激化するなか、商品や価格など以外に、こうした要素も支持を得るポイントとなることを示唆していると言える。
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