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2021~22年の流通再編を総まとめ 主役はオーケー、H2O、カインズ、ヤオコー・・・

流通相関図大

オーケーとの争奪戦の末、関西スーパーはH2O傘下に

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。発見から2年以上が経過した今、感染対策のノウハウも普及し、ワクチン接種も進むなか、徐々に収束の時期が近付きつつある。コロナ禍では在宅勤務の普及や非接触ニーズの拡大、来店頻度の減少など、生活者のライフスタイルが大きく変化した。小売業界ではこうした変化への対応に加え、既存のビジネスモデルの見直しや事業の改革などを背景に、この1年も大小さまざまな再編がみられた。

 食品スーパー(SM)業界で最も注目を集めたのは、やはりエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/荒木直也社長:以下、H2O)とオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)による関西スーパーマーケット(兵庫県/林克弘社長:現・関西フードマーケット)の争奪戦だろう。関西スーパーマーケットは21年8月、H2Oとの経営統合を発表したが、オーケーがこれに反対。TOB(株式公開買い付け)による完全子会社化の意思を表明した。最終的に法廷闘争にまで発展したものの、結果としては最高裁判所がオーケーの抗告を棄却し、当初の予定通りH2Oによる買収が決定した。

関西スーパーマーケットは、阪急オアシス、イズミヤを傘下に持つエイチ・ツー・オー リテイリングと経営統合した

 21年12月にはH2Oの完全子会社であるSM企業のイズミヤ(大阪府/梅本友之社長)、阪急オアシス(同/永田靖人社長)と関西スーパーマーケットが株式交換により経営統合した。その後22年2月には、関西スーパーマーケットが関西フードマーケットに商号変更し、事業を承継させた新生関西スーパーマーケット(兵庫県/福谷耕治社長)、イズミヤ、阪急オアシスの3社を傘下に抱える中間持ち株会社となった。3社の売上を単純合算すると約4000億円。関西最大のSMグループが誕生した。なお、H2Oは21年7月に万代(大阪府/阿部秀行社長)との業務提携も締結しており、関西エリアにおける影響力をますます強めている。

 中国・四国エリアでも大きな再編が発表された。イオン(千葉県/吉田昭夫社長)傘下のマックスバリュ西日本(広島県/平尾健一社長)と、イオンと資本業務提携を結んでいたフジ(愛媛県/尾﨑英雄社長)が経営統合する。22年3月、フジは持ち株会社となり、フジの事業を承継したフジ・リテイリング(愛媛県/山口普社長)とマックスバリュ西日本がぶら下がる体制となった。また、この再編によりイオンのフジへの出資率は51.5%に高まった。最終的には24年3月をめどにフジとマックスバリュ西日本が統合し新会社が設立される計画だ。ここ数年、イオンは各地域の事業会社の再編を進めており、中国・四国エリアではその一環として21年3月にマックスバリュ西日本がマルナカ、山陽マルナカを吸収合併していた。さらにフジとの統合を進めることで、同エリアにおける地位をより盤石なものにしようとしている。

ヤオコーとせんどうが資本業務提携

 優良SMとして他社からベンチマークされることも多いヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)も新たな動きをみせている。21年2月にはディスカウントストア(DS)企業としてフーコット(同/新井紀明社長)を新設し、すでに2店舗を出店。21年9月には千葉県を本拠とするローカルSMのせんどう(木口誠一社長)と資本業務提携を締結した。

 SM業界では、ニーズが拡大しているネットスーパーを軸とした提携も増えてきた。以前から西友(東京都/大久保恒夫社長)とともにネットスーパーを運営している楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長)は、ネットスーパープラットフォームとして新たに「楽天全国スーパー」を立ち上げ、22年1月にはベイシア(群馬県/橋本浩英社長)が出店を開始。いなげや(東京都/本杉吉員社長)、大阪屋ショップ(富山県/平邑秀樹社長)も出店することを発表している。

 また、アマゾンジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長)の有料会員向けサービスでは、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)に続き、21年6月からはバロー(岐阜県/田代正美社長)、22年3月からは成城石井(神奈川県/原昭彦社長)がネットスーパーを開始した。そのほか、ローカルSMのスーパーサンシ(三重県/田中勇社長)が展開するネットスーパーのフランチャイズ事業「JAPAN NetMarket」には、すでに約20社の中小SMが参加しているなど、ネットスーパーにおける勢力図が徐々に鮮明になりつつある。

カインズが東急ハンズを完全子会社化

カインズは22年3月、東急ハンズを完全子会社化した

 ホームセンター(HC)業界では、ニトリホールディングス(北海道/白井俊之社長)による島忠(埼玉県/岡野恭明社長)の買収に続き、カインズ(同/高家正行社長)による東急ハンズ(東京都/木村成一社長)の買収が大きなインパクトを与えた。22年3月31日付でカインズが東急ハンズの発行済み全株式を取得し、完全子会社化した。業績好調なカインズに対し、東急ハンズはここ数年業績が低迷していた。カインズが東急ハンズをどのように“復活”させるか──。その手腕が問われることになりそうだ。

 LIXILビバ(埼玉県/坂本晴彦社長:現ビバホーム)の買収で注目を集めたアークランドサカモト(新潟県/同)は21年9月、家電量販店最大手のヤマダホールディングス(群馬県/山田昇会長兼社長)と店舗開発における業務提携を締結。22年2月には共同開発店舗の1号店として、HCや家電量販店などを融合させた「Tecc LIFE SELECT New一宮店」(愛知県一宮市)を開業している。そのヤマダHDはアークランドサカモトのほか、21年4月に販促におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)でサイバーエージェント(東京都/藤田晋社長)と業務提携。22年2月にはアマゾンジャパンと共同開発した「スマートテレビ」を発表するなど、異業種との提携に積極的に取り組んでいる。

クスリのアオキにウエルシア…SMに接近するDgS

 ドラッグストア(DgS)業界では、ついにマツキヨココカラ&カンパニー(東京都/松本清雄社長)が誕生し、業界のトップ争いに食い込む巨大DgS企業となった。その傘下に中間持ち株会社のマツモトキヨシグループ(千葉県/同)、ココカラファイングループ(神奈川県/塚本厚志社長)、両社のシナジー創出を目的として設立されたMCCマネジメント(東京都/松本清雄社長)が連なる。26年3月期にグループ売上高1.5兆円、営業利益率7.0%を経営目標に掲げ、新たなスタートを切った。

 また、DgS業界の動向で注目されるのが、クスリのアオキホールディングス(石川県/青木宏憲社長)を中心とする食品強化の動きだ。同社はここ数年、地場SMの買収を進めており、この1年ではスーパーマルモ、一二三屋などを傘下に加え、SMのノウハウを生かした食品販売にいっそう力を注いでいる。また、ウエルシアホールディングス(東京都/松本忠久社長)も同じイオン系列のカスミ(茨城県/山本慎一郎社長)やマックスバリュ北陸(石川県/師井昭造社長)と売場を融合させた共同出店を実施しているほか、一部の店舗では自社による生鮮売場の運営にも取り組んでいる。

 オーバーストアや人口減少、高齢化など以前からさまざまな課題を抱えている小売業界。さらにコロナ禍では消費者のライフスタイルが大きく変化していることにより、変化対応のスピードの速さがますます重要になっている。業務効率化のためのデジタルシステム導入やネットスーパー、他社との差別化につながる魅力的な商品開発などにはそれ相応の投資が必要だ。1社では成し得ない施策を実現するため、あるいはスケールメリットやより効率的な企業運営を求めて、今後も小売業界では同業態、異業態を問わずさまざまな再編が活発化するとみられる。

 

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