首都圏の緊急事態宣言、GDP0.7%前後下押し エコノミスト試算
[東京 4日 ロイター] – 菅義偉首相は4日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、緊急事態宣言の再出検討を表明した。1都3県の知事に押された格好だが、経済活動との両立を訴えてきた菅首相は限定的な措置になると強調。首都圏を対象に1カ月程度でとどまった場合、経済への影響も限られ、国内総生産(GDP)を0.5─0.7%押し下げる程度とエコノミストらは試算する。
安倍晋三政権下で昨春実施された緊急事態宣言は期間が最終的に2カ月弱、対象も当初の7都道府県が途中から全国に拡大された。政府は映画館や百貨店、学校の休校も含め、昼間も行動制限をかけた。それに対し、今回は現在のところ、飲食店の閉店時間を午後8時に前倒し、酒類提供を午後7時までにするなど、夜の時間短縮などに絞った規制が中心になるとみられる。共同通信は、宣言の期間を9日から1カ月程度を軸に調整していると報じた。
SMBC日興証券の牧野潤一・チーフエコノミストは、今回の内需落込み幅は最大で年間GDP比0.7%程度と試算。同3.4%だった昨春に比べて5分の1程度にとどまるとする。第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミストは今回、最大0.5%程度の落込みにとどまるとみている。
それでも、最も影響を受けるとみられる飲食や旅行業界では不安の声が広がっている。ある居酒屋チェーンの広報は、「感染者数の減少とともに客足も戻ってきていたため、年末年始に期待していた。しかし、感染者数の再拡大で客足は鈍く、期待外れ。さらに緊急事態宣言となればかなり厳しい」と話す。
大手旅行会社は「GOTOトラベル停止の延長の場合は、多少なりキャンセルなどの影響はあると思う。売上が大幅に落ち込んだ去年は助成金では足りなかった。今後もいただけるのであればありがたい」と支援の必要性を訴える。
昨春と同様、対象が全国に拡大された場合はインパクトが一段と大きくなる。BNPパリバ証券の河野 龍太郎・チーフエコノミストは、1─3月期のGDPが前期比年率マイナス10%程度と2桁の落ち込みとなる可能性があるとみている。もっとも、これも年率マイナス29.2%となった昨年4─6月ほどにはならない見通しだ。当時は世界的な経済活動の低下により輸出に大きな影響が出たが、今回は海外での状況に当時ほどの変化がないため、国内要因だけに限定されるためだ。