薬王堂、復興特需から日常消費へ 売れ筋動向つかみ大幅増益

ダイヤモンド・ドラッグストア編集部
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 東日本大震災による影響で11店舗の休止に追い込まれ、現在もなお6店で仮設店舗による営業を続けている薬王堂(岩手県矢巾町、西郷辰弘社長)だが、この1年ほど、「地域とのつながり」「顧客の近くにあること」の大切さを実感した1年はあるまい。

 4月11日に発表された2012年2月期決算によれば、売上高/455億 7000万円(前期比108.1%)、営業利益/23億1000万円(同224.5%)、経常利益/24億4400万円(同216.1%)となり、いずれも11年12月22日に上方修正した業績予想を上回る結果となった。「震災による復興需要が落ち着きを見せるなか、日常生活に密着した品揃えが売れ筋に変わっていった」(西郷辰弘社長)ということもあり、大幅な増益を実現した。

 通期での出店は、岩手、宮城それぞれ4店舗、休止店舗のうち4店舗で営業再開にこぎつけた(退店2店舗あり、期末店舗数は130店舗)。26店舗の既存店で改装を行い、冬物商材、風邪薬、スキンケア関連商品など季節商品が売上高を底上げ、震災特需が大きかったとはいえ、累計での既存店売上は前期比114.1%となった。商品別では台所用品、衣料用洗剤、肌着や、加工食品、日配品等が大きく伸張し、日用品・衣料品、食品・酒類等の各部門で、前期比2ケタの伸びをみせた。

 販管費は、継続的なコスト削減活動に加え、震災による営業休止にともないパートなどへの支払いが大きく減少(約2億円)したこともあり、前期比3億3200万円の削減。その結果、販管費率は前期比2.4ポイントマイナスの19.3%に抑制された。

 13年2月期については、岩手県大槌店、山田店の営業再開を含め、17店(岩手9、宮城7、山形1)の出店を計画。創業35周年を記念した販促キャンペーン(「絆35」)を展開しながら、前期比8.6%増の売上高495億円をめざす。既存店売上高は前期の震災特需からの反動減を見込み、上期95.1%、下期100%、通期97・5%としている。

 また今回から中期の経営目標の公表を再開、16年2月期に店舗数200店舗、売上高700億円、経常利益31億円(経常利益率4.4%)を掲げた。来期(14年2月期)以降、毎年20店舗程度を出店する計画で、岩手で100店舗(12年2月期64店舗)、宮城で55店舗(同28店舗)、山形への出店強化(同3店舗)、業績改善が見られる青森(同18店舗)、秋田(同17店舗)への出店再開により、200店舗態勢を確立していく考えだ。

 同社では現在、商圏人口1万人以下の店舗を15店舗ほど展開しているが、今後はさらに小さい商圏人口7000人以下のフォーマットづくりにも注力する。その第一歩として、今期、北上山地にある岩手・葛巻町に297坪の店舗を出店する。12年2月時点で人口7088人、65歳以上が4割近くを占める酪農の町だ。「従来店舗より介護関連の品揃えが多くなる。身の回り品、食品などがなんでも揃う、よろずやに近い」(西郷社長)。正社員2人のほかはパート、日販ベースの損益分岐点は65万円程度を考えている。

 急速な人口減少、高齢化を前提に商圏設定を考えざるを得ない東北地方だが、商圏人口7000人規模で切っていけば、目標とする200店舗態勢を築くに十分な出店余地があると同社では読む。また、200店舗の規模があれば中国生産のPBをコンテナ単位で運べるボリュームになり、コストの大幅な削減も期待できるという。

 4月5日に発表された12年3月期の月次は、既存店売上高が前年同月比83.4%となった。135.7%だった11年3月期からの反動減を考えれば、震災前の実績を優に上回る。未曾有の大震災から「近くて便利なお店」の重要性をあらためて認識した同社。自らが基盤とする東北地方でのドミナントの確立に向け、重要となる1年がもう始まっている。

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