「価格」と「品質」と「数量」の壁を乗り越える ユニクロの再生ポリエステル

北沢 みさ (MK Commerce&Communication代表)
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「金メダルが獲れたのは、ユニクロのウェアのおかげ」

 「実は、ドライEXの開発のスタートは、車椅子テニスの国枝慎吾選手やプロテニスプレーヤーの錦織圭選手など、グローバルブランドアンバサダーにプレイ中に着用していただくウェアの開発からでした。提供用ウェアなら、もちろん彼ら一流選手のパフォーマンスを落とすわけにはいきませんから、開発する中で品質を上げていけますし、まずは少量から始められるので」(小森田氏)

 その分、プレッシャーは大きい。ユニクロのウェアを着て、トップ選手である彼らのパフォーマンスが落ちた、などということになったら大変なことだ。しかし、このユニフォーム開発に挑戦したことより、素材の性能と品質は飛躍的に向上することになる。

 「たとえば国枝選手はメッシュ素材を好み、かつ、こだわりも強いので『2回前の大会のこのメッシュの方が穴の開き方がよかった』などと言われることもありました。そういうフィードバックをいただきながら、より選手の求めるものを先回りして素材を改良し、選手が最高のパフォーマンスを出せるよう開発を進めてきました」(小森田氏)

 サステナビリティ先進国であるスウェーデンのオリンピック・パラリンピック代表チームへのウェア提供では、先方の求める基準をクリアするのにこれまでにない苦労もあったが、選手から思いがけない言葉をもらった。

スウェーデン代表選手(写真:スウェーデンオリンピック・パラリンピック委員会提供)

 「北京大会の男子モーグル種目で金メダルを獲られたモーグルのウォルター・ウォルバーグ選手から、『この金メダルを獲れたのは、半分はユニクロのウェアのおかげだ』というお言葉をいただきまして、それは本当に嬉しかったです。モーグル競技は、かなりハードな動きをするんですが、とにかく着ている感覚がないぐらいいいウェアだった、と。それまでは、どこかで『カジュアルブランドが作るスポーツウェアって本当にいいの?』と思われているんじゃないか、という不安がありましたが、このお言葉で不安も払拭されました。僕たちの開発したウェアが、選手のパフォーマンスを上げたと言ってもらえたわけですから」(小森田氏)

 ユニクロのウェアは選手たちからも高く評価され、2019年から始まったパートナーシップ契約は2度延長されて、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ大会まで継続することが決まっている。

 こうして、トップアスリートのために開発された高機能かつサステナブルな素材を使用したアイテムが、パートナー企業との弛まない努力の上で生産数量を増やし、ユニクロの通常アイテムとして世界中で販売されていく。

 アパレル業界では、ユニクロのヒートテックやエアリズムのような「機能性素材」を取り入れているところが増えているが、小森田氏の「社会の課題を服で解決できると信じている」という言葉に、ユニクロがトップランナーとして走り続ける所以を感じる。

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記事執筆者

北沢 みさ / MK Commerce&Communication代表

東京都出身、日本橋在住。早稲田大学第一文学部卒業。
メーカーのマーケティング担当、TV局のプロデューサーの経験を経て、
1999年大手SPA企業に入社しマーケティング・PRを12年、EC・WEBマーケティングを8年担当し、ブランドの急成長に寄与。
2018年に独立後は、30年に渡る実務経験を活かし、小売・アパレル業界を中心に複数企業のアドバイザーとして、マーケティングおよびEC業務を支援中。

 

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