飲食店の後継者不足を支援するシェアレストラン 吉野家、新業態戦略の真意とは
外食業界の業態開発はM&Aが主流に?
こうした状況を踏まえると、外食チェーンが自ら新業態を開発すればよいと思われがちだが、顧客の多様なニーズに応える革新的な業態を生み出すのは決して容易ではない。図表は、売上ランキング上位の外食チェーンがどのように業態展開をしているかを示したイメージ図である。なお、日本マクドナルド(東京都)は、アメリカ発祥の「マクドナルド」を日本で展開する企業であり、自社で新たな業態を開発しているわけではない。そのため、今回の比較対象からは外す。

図表を見ると、外食業界では多くの企業が単一業態を軸に展開していることがわかる。たとえば、あきんどスシロー(大阪府)、くら寿司(東京都)、サイゼリヤ(埼玉県)などのチェーンは主力業態の存在感が強く、第2の業態が広く知られているわけではない。
一方、多業態展開で知られているのはゼンショーホールディングス(東京都:以下、ゼンショーHD)やコロワイド(神奈川県) である。しかし、これらの企業はその業態のすべてを自社開発したわけではない。強みとするM&A(合併・買収)によって、数々の企業を買収し、多業態を実現してきたのだ。
このうちゼンショーHDは「はま寿司」を自社で立ち上げ、回転寿司市場で一定の地位を築いた実績がある。しかし、さまざまな回転寿司大手にM&Aを持ちかけたものの成功せず、結果として業界3位にとどまっている。
また、すかいらーくホールディングス(東京都) は基本的に自社開発による多業態展開を進めてきた数少ない企業である。しかし24年に「資さんうどん」を展開する資さん(福岡県)をM&Aで傘下に入れるなど、従来の自前主義を転換させる動きが見られている。同じく外食大手のロイヤルホールディングス(東京都) も、大手商社の双日(東京都)と手を組み、外食開業支援を事業化するなど、新たな戦略を模索している。
このように、外食チェーンの業態開発は、結果として自前主義では難しく、M&Aに依存せざるを得ないのが現状である。M&Aにおいては、先述したようにすでに成長した企業を買収するのではなく、将来有望な外食ベンチャー(シーズベンチャー)を育成し、早い段階で取り込むことで投資効率を高める戦略も重要になってきている。
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