店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは
小売業界で「オムニチャネルだ」「OMOだ」と喧伝されて久しいが、コロナが明けて人々が店舗に回帰した到達点は、在庫が顧客に近づく「ローカルロジスティクス」になりそうだ。店舗か通販(EC)かという繰り返されて来たチャネル論争の本質は、売り手と顧客を繋ぐロジスティクスの利便性と効率性に帰着するのではないか。
店舗回帰で変貌するOMO
2008年以降のスマホの普及で「モバイルショッパー化」が急進してECとOMO※1が相乗的に拡大し、コロナ禍のお篭り期間でECは爆発的に拡大した。その後コロナが明けて消費の店舗回帰が進むにつれ、ECの伸び悩みが顕著になる一方でOMOの性格も「ウェブルーミング※2」方向に変貌し、物流の逼迫と高コスト化も相まってロジスティクスも店舗と顧客に近づく「ローカルシフト」に転じている。
※1 OMO(Online Merges with Offline)— ネットと店舗の垣根を超えた連携を意味し、ショールーミング(店舗からネット)による情報取得で店舗やネットの購入を促進したり、ウェブルーミング(ネットから店舗)による店取り置きや店渡し(BOPIS)、店出荷で顧客利便と在庫効率を高め物流コストを抑制するリテール戦略
※2 ウェブルーミング(Webrooming)とショールーミング(Showrooming)— ネットで店舗や商品を選んで取り置いたりしてから店舗に行くのがウェブルーミング。店舗で商品を見てネットで情報を調べたりECで購入するのがショールーミング。両方を行き来するショッピング行動をO2O(Online to Offline)と呼ぶ
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、コロナ禍の2年間で衣類・服飾雑貨のEC売上は27.1%伸びて2兆4280億円、小売流通総額に占めるEC比率も13.9%から21.2%に急上昇したが、コロナが収まって消費が店舗へ回帰する中、22年は5.0%しか伸びずEC比率も0.4ポイントの微上昇にとどまった。
行動規制が解除された23年5月以降は店舗回帰が急進し、アパレル各社のEC売上も前年を割るケースが目立ってきたから、23年の衣類・服飾雑貨のEC売上は微増にとどまり、EC比率は22年の21.6%から横ばいか多少低下したと推察される(8月末に開示される)。
株式公開主要アパレルチェーンの各決算期におけるEC売上とEC比率の推移を見ても、20年、21年と急伸した後の22年、23年は伸びが鈍化しており(ユナイテッドアローズは20年のみ急伸して21年は失速)、EC売上は多少伸びてもEC比率は横ばいか低下に転じている(下図参照)
小島健輔のアパレル一刀両断! の新着記事
-
2024/12/16
VTuberビジネスに学ぶ、小売業を高収益化する「レバレッジ」の掛け方 -
2024/11/13
値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由 -
2024/10/16
「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは -
2024/09/18
ユニクロ、ZARA、しまむら、ワークマンを比較!在庫はどこに置くのが正解か? -
2024/09/02
SPAか仕入れか?チェーンストア衣料品が選ぶべきは「しまむら型」である理由 -
2024/08/14
ムダ多く割高!日本のアパレル生産が「ガラパゴスの壁」を越える方法
この連載の一覧はこちら [15記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2024-11-16ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2022-01-11ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
- 2019-04-12柳井正が語るユニクロ「働き方改革」の真価
関連記事ランキング
- 2024-12-10ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは
- 2024-11-26イタリア繊維産業に学ぶ、高くても売れるビジネスの秘密とは 染めと売り方が段違い
- 2024-12-03ユニクロ柳井会長がウイグル綿花不使用発言に至った理由と影響、その複雑な背景とは
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2024-12-17あなたはいくつ備える?AI時代に生き残るビジネスパーソン3つの条件とは
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-09-26無印良品の一部となる三菱商事ファッションとユニクロ:Cの成功が意味することとは