ユニクロを凌駕!ZARAとアダストリアに見るアパレル勝ち組の構図
グローバルSPA(製造小売業)のトップを走るINDITEX(インディテックス、「ZARA」が主力)と国内SPAで絶好調のアダストリア(東京都/木村治社長)、両者に共通するアパレル勝ち組の戦略構図は興味深いものがある。チェーンストア衣料品とは次元が違うのかも知れないが、知っておけば過ちが防げるのではないか。アパレルビジネス、チェーンストア衣料品ビジネスを知り尽くす小島健輔氏が徹底解説する。※本稿では為替レートは23年平均で統一し、ユーロは151.94円、SEKは13.242円で計算した
増収増益で独走体制を固めたINDITEX
INDITEXと聞いてピンと来ない方もいるかも知れないが、「ZARA」を主力業態として世界95カ国・地域に5692店舗を展開する世界最大かつ最高収益のスペイン拠点のグローバルSPA企業だ(ファーストリテイリングは25カ国・地域に3591店舗/2024年2月末)。
INDITEXの24年1月期決算は売上高が対前期比10.4%増(現地通貨ベースでは14.1%増)の359億4700万ユーロ(5兆4618億円)、営業利益(EBIT)が同23.4%増の68億900万ユーロ(1兆346億円)、売上高営業利益率は2.0ポイント上昇して18.9%、当期純利益は同30.3%増の53億9500万ユーロ(8197億円)、売上高純利益率は2.3ポイント上昇して15.0%と、事業規模も収益力もグローバルSPA断トツ首位で独走体制を固めている。
23年8月期のファーストリテイリングは売上高(売上収益)が同20.2%増の2兆7666億円、営業利益が同28.2%増の3811億円、売上高営業利益率は0.9ポイント上昇して13.8%、当期純利益は同10.7%増の3152億円、売上高純利益率は1.0ポイント低下しても11.4%とコロナ前を大きく超えて再拡大に転じているが、売上高の差は多少縮まってもINDITEXの半分強(50.7%)にとどまり、依然両者の差は大きく、営業利益は3倍近い開き(36.8%)がある。
23年11月期のH&Mの売上高は同5.6%増の2360億3500万SEK(3兆1256億円)、営業利益は同102.8%増の145億3700万SEK(1925億円)、売上高営業利益率は3.0ポイント回復しても6.2%、当期純利益は同145%増の87億2300万SEK(1155億円)、売上高純利益率は2.1ポイント回復しても3.7%と、ようやくコロナから回復した病み上がりで、売上高はコロナ前を超えても収益力は戻っていない。売上高こそINDITEXの6掛け弱(57.2%)だが営業利益は5分の1にも届かず(18.6%)、格差は年々開いてINDITEXの背中は遠くなっている。
INDITEXの粗利益率は0.8ポイント上昇して57.8%と、H&Mの51.2%、ファーストリテイリングの50.9%との格差はさらに開いた。販管費率も38.8%と1.1ポイント低下して、単品セルフ販売のユニクロを主力とするファーストリテイリングの38.1%と大差なく、45.9%と運営コストのかさむH&Mを突き放している。INDITEXの営業利益率は2.0ポイント上昇して18.9%と13年1月期の19.5%に迫り、6.2%に回復したH&M、0.9%上昇して13.8%となったファーストリテイリングを大きく引き離している。
INDITEXの2つの強みと3つの改革
この圧倒的格差の背景はいくつも挙げられるが、元々からの「2つの強み」にコロナ前後に断行された「3つの改革」が奏功したと思われる。
小島健輔のアパレル一刀両断! の新着記事
-
2024/11/13
値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由 -
2024/10/16
「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは -
2024/09/18
ユニクロ、ZARA、しまむら、ワークマンを比較!在庫はどこに置くのが正解か? -
2024/09/02
SPAか仕入れか?チェーンストア衣料品が選ぶべきは「しまむら型」である理由 -
2024/08/14
ムダ多く割高!日本のアパレル生産が「ガラパゴスの壁」を越える方法 -
2024/07/24
拝借スペックのPBでは生き残れない!GMS衣料品は自前開発を決意せよ
この連載の一覧はこちら [14記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-09-27ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-10-16「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-11-16「ラルフローレン」と「ユニクロ」が同じである理由とZ世代に対する誤解が生む悲劇
- 2022-01-11ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
関連記事ランキング
- 2024-10-29ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
- 2024-11-05ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方
- 2024-11-12アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由
- 2024-10-22事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-09-27ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ
- 2022-01-264種のアプリを駆使し、ナイキが顧客との”ディープな関係”を極める理由
関連キーワードの記事を探す
ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは