日本企業の戦略が凡庸な理由と「中卒・高卒エリート」が静かに増加中のワケ
批判を承知で言わせて頂ければ、先日、韓国である講演会に参加したのだが、そのプレゼンテーションに対して、私は違和感だらけだった。理由は、なんの根拠もなく「これが流行っている」を繰り返していただけだったからだ。私たちは why が知りたいのに、その why は本人も分かっていないように見えたのだ。もちろん、言語の壁もあろう。
しかし、もっと情けないのは、日本人リスナーだ。「常識」さえ疑わないか、「ふん、韓国か」とはなから相手にしない輩の2グループに分かれるのだ。私は、何年も前に韓国に常駐したことがある。彼らは自分たちが日本アパレルの「パクリ」を極めてうまくやっていることを認めながら、そこにオリジナリティがないことに何ら後ろめたい気持ちがなかった。現実に距離的な近さからか、表向きこれだけ相手を批判しあっているのに、文化面での日本の若者の韓国好き、韓国人の日本人好きは世界でも珍しいほどだ。韓国に観光旅行に行った人なら誰でも感じるだろう。私たちは、こういうところから知的武装をし、30年以上もフリーズしている既成概念を破り、よい意味でいろんな国の良いところをパクるべきなのである。
日本の上場アパレル専門店トップ10社ランキング
こうした日本の特殊性を踏まえて下記のランキング表を見ていただきたい。これは日本の上場アパレル専門店の売上高トップ10社ランキングだ。
本業でかせぐカネ、つまり営業利益についてみてほしい。これからは企業規模以上に付加価値が大事になるので、見るべきは営業利益率だ。このチャートは、「アパレル専門店」という括りのため、ワールドやワコールHD、オンワードHDは入っていない。また上場企業のデータなのでストライプインターナショナルやマッシュスタイルホールディングスなどは入っていない。さらに市場という意味でいえば、外資のZARAやGapなども入っていない点を留意ほしい。これをみればワークマンとファーストリテイリングが圧倒的な存在であることがわかる。特にワークマンの高収益の理由は過去分析しているので、興味のあるかたは参照してほしい。
また本チャートでは触れられていないが、注目したい指標がPBR(株価純資産倍率)だ。これは資産に対して株価がどの程度の価格をつけているのかを表す指標である。もっとストレートに言えば、1以下は「今すぐ営業をやめて、もっている資産をすべて換金すれば時価総額より高くなる」ということになる。PBR1倍割れは経営者の目的である株主価値を最大化できていない(それどころか毀損している)点で、経営者失格の烙印を押すものだ。ファーストリテイリングは6倍超、ワークマンは3.6倍ある一方で、ランクイン企業の多くは1倍未満に甘んじている。
この超割安な株価をアパレル産業の負の実態とみるか、これからM&Aによる合従連衡、海外出店、二次流通事業などのビジネスモデル転換などReady for change (いつでも変わる準備ができている)の状態だとみるかは意見がわかれるところもあるだろう。
いずれにせよ、相も変わらず「来年のトレンドは、、、」と、博打ビジネスから抜け出せていないのはなぜなのか、今日は思考のステップを書き綴り、自ら考えてもらいたいというメッセージを込めて本稿を書いた。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
株式会社FRI & Company ltd..代表(2023年8月1日に社名を河合拓コンサルティング株式会社より変更)Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。最近ではAI企業、金管楽器メーカー、中国企業などのスタートアップ企業のIPO支援などアパレル産業以外にクライアントは広がっている。座右の銘は生涯現役。現在は自費で大学院で経営学の、独学で英語の学び直しを行っている。
著作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送サテライトTV」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議にたびたび出席し産業政策を提出。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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