営業利益の1割以上!?「リテイルメディアは、小売業の利益にどれだけ貢献するのか?」
リテールメディアにいつ参入すべきか
気になるのは、日本において、リテールメディア事業でどのくらい利益を上げられるかということだろう。
正しい手順で正しい投資をしたうえでと前置き付きで、矢矧氏も徳久氏も「(ウォルマートが言うような)過半数を占めるまでには至らないと思うが、営業利益全体の1割以上の構成比は十分にめざせる」と口を揃える。
なお、日本で先行するファミリーマートは、5年後にリテールメディアから得られる事業利益として100億円をめざすことを7月に明らかにしている(同社の23年2月期の全体の事業利益は640億円)。
では、リテールメディア事業に参入すべきタイミングはいつなのだろうか。
リテールメディア事業を始めたからと言って、すぐに収益化するものではなく、短くても1年以上長ければ数年という時間がかかる。一方、すでに先行して投資をしている大手企業は、リテールメディアで収益化し本業に投資をするという「フライホイール」がまわり始める時期に差し掛かっている。
結果、リテールメディアで得た収益を本業に投資できる企業とそうでない企業との間で、おのずと競争力に差がついてくることになり、その差は「投資額の差」に比例して、年々開いていくことになる。だとすれば、できるだけはやくアクションを起こすことが重要になりそうだ。
「リテールメディアを成功に導くにはお金も時間もかかる。早くから始める最大のメリットは正しく失敗できる期間がつくれるということだ」と矢矧氏も語る。
リテールメディアは今後、時間の経過につれて、重要性が増すことはあっても薄れることはなさそうだ。もちろん、リテールメディアが単なるバズワード扱いされて、正しい手順と正しい投資がなされなければ、そもそもリテールメディア市場の確立さえおぼつかない。その意味では「正しいリテールメディアの始め方、取り組み方」が重要になる。次回、そのことについて解説したい。