地域循環型社会をめざす 食品ごみを削減し食品リサイクルを推進する「地域食品資源循環ソリューション」
NTTビジネスソリューションズが、リサイクルコンポストを活用する「地域食品資源循環ソリューション」の提案を進めている。ICTを事業の核とする同社が、なぜリサイクルコンポストを扱うのか。その背景には食品廃棄物(食品残渣)の削減だけでなく、資源としての活用による地域循環型社会の構築をめざすねらいがある。
待ったなしの食品廃棄物の削減
「フードロス」「食品廃棄物」といった言葉が、この数年、耳目を集めるようになっている。
2015年に国連サミットで採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」(SDGs)において、環境やジェンダーなど17のゴールと169のターゲットが掲げられ、各企業は経営課題としてそれぞれの目標達成に取り組むことが求められるようになっている。とくに、食品流通業界が喫緊に取り組まなければならないのが、このSDGsの中の「生産・消費」において盛り込まれたターゲット12.3の「2030年までに食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」という目標だ。
実際に国内の食料廃棄物はどれだけあるのだろうか。
農林水産省によると、食品産業全体の食品廃棄物等の年間発生量は、1756万トンだ(家庭で廃棄されるいわゆる食品ロスを除く)。これを業種別にみると、全体の8割強を占めるのが食品製造業で1422万トン、次いで外食産業の190万トン、食品小売業の119万トン、食品卸売業の25万トンである。全体では、漸減傾向にあるとはいえ、日本人1人当たりに換算すると1.4トン以上が廃棄されていることになる。
国でも「食品リサイクル法」や「食品ロス削減推進法」などを制定し、食品廃棄物、食品ロスの削減を後押ししているが、食べられるのに捨てられる食品・製造過程で捨てられる食品廃棄物を削減すること、そして有効資源として活用していくことが、社会全体で求められるようになっている。
食品資源の循環による地域循環型社会の実現をめざす
西日本電信電話(NTT西日本)傘下で、情報通信システムの提案、構築、サポート等業務を担うNTTビジネスソリューションズが、NTT西日本グループのICTを活用して、食品関連事業者、リサイクルセンター、地域内契約農家の循環型社会の構築をめざしている。その第一歩として食品産業のSDGsへの取り組みやリサイクル事業をサポートする「地域食品資源循環ソリューション」を提供している。
同事業は、食品関連事業者の事業所内に「食品残渣発酵分解装置(フォースターズ)」を設置し、食品由来のごみ(食品残渣)を分解した一次発酵物を回収して、リサイクルセンターにて堆肥化。さらに再生された堆肥を土壌改良材として、契約農家などに提供し、循環農作物を生産するものだ。
つまり、食品残渣のリサイクルにより食品資源の循環を実現し、食品ロスの削減と食品リサイクルの推進で、SDGsに貢献していこうというものだ。
環境負荷低減とコスト削減の両立
「地域食品資源循環ソリューション」では、食品残渣を微生物由来の堆肥化促進材の力で、分解し堆肥のもととなる一次発酵物を生成するリサイクルコンポスト「フォースターズ」を使用する。食品残渣投入後、24時間で約1/10に分解。数日から1週間後には約1/20程度となり、一次発酵が完了する。残渣量に応じて、いくつかのサイズタイプをラインアップ。設置も屋内でも屋外でも可能なことが特徴だ。これまでも業務用コンポストによるリサイクルシステムが導入されているケースはある。しかしフォースターズには、従来のタイプと比較して、いくつかの優位性を持っている。
同製品で使われる堆肥化促進材には、「サーべリックス(枯草菌C-3102株)®」が採用されている。同促進材は、従来では分解が難しかった、水分が多い果実や、肉などの繊維質が多い食物も分解する力を持つ。
また、食品残渣を減らす消滅型といわれる分解促進材もあるが、このタイプと比較して、フォースターズは、排水のSS(不溶解性物質∗¹)値・BOD (生物化学的酸素要求量∗²)値が比較的低く、より環境負荷を低減できるのが特徴だ。
菌ではなく熱で食品残渣を減らすコンポストもあるが、こうしたタイプは腐敗臭を発生させたり、二酸化炭素を発生させたりすることもあったが、フォースターズは菌で発酵分解するため、いやなにおいが出にくく、かつにおいも外に漏れにくい。
また、加熱を行わないため光熱費も安価にでき、二酸化炭素の発生も抑えられる。
さらに、「地域食品資源循環ソリューション」では、通常の廃棄処理と比較して食品廃棄にかかるコストを格段に抑えることができる。たとえば1日の平均食品残渣量が800kg、廃棄費用が30円/kgとした場合、同ソリューションの導入で6割近いコスト削減が実現するという(地域やケースによってシミュレーションに差が出る)。レンタル契約とすることで、初期費用がかからず、導入障壁は低い。また、レンタル契約には機器本体の導入から、設置作業、保守メンテナンスまでが含まれているため、導入後の運用負担も少ない。
導入続く「地域食品資源循環ソリューション」
19年7月に「地域食品資源循環ソリューション」をスタートしてから、すでに大手食品加工業者、食品スーパー、卸、外食での導入が進んでいる。
レンコン加工の最大手、マルハ物産(徳島県)は、20年1月に「地域食品資源循環ソリューション」の運用を開始したが、導入の決め手となったのはフォースターズの操作がシンプルだったためだという。食品加工業者には、新人や外国人の技能実習生などさまざまな人がいる。食品残渣を投入するだけで作業が完了するという簡便性は、大きなメリットだ。
卸の東京促成青果(東京都)では、これまで野菜ごみ脱水機を導入していたが、日々の入荷量が変動するため、処理費用が安定していなかったのが課題だった。フォースターズの導入で、食品残渣処理を固定費として扱えること、さらに単にごみを処理するというだけでなく、循環型社会を構築するというNTTビジネスソリューションズの考えにも共鳴し、「地域食品資源循環ソリューション」への取り組みにいたった。
NTTビジネスソリューションズは、NTT西日本グループが取り組む地域の課題解決の取り組み「Smart10x」の推進でも中核となる役割を担う。
「Smart10x」とは、NTT西日本グループが注力する「10分野」において、それぞれの地域が抱える課題を、ICTを活用することでスマートな社会にすることをめざしている(右記図参照)。今回紹介した「地域食品資源循環ソリューション」は、この10分野の課題のうち、スマートフード、スマートアグリsに相当する。
フォースターズの導入は、食品流通における食品残渣の有効利用という意味で意義は高い。さらに、食品残渣の有効利用で地域循環型社会をつくること、さらにICTを活用してスマートな地域社会を強化していくこと。NTTビジネスソリューションズの提案する「地域食品資源循環ソリューション」は、食品業界に大きな役割を果たすと期待されている。
※1 SS(不溶解性物質)…2mmのふるいを通過し1μm(マイクロメートル)のろ過材上に残留する物質。
※2 BOD (生物化学的酸素要求量)…水の汚れを微生物が分解するときに使う酸素の量。 この酸素の量が多いほど、汚れがひどいことを表す。
詳しい紹介はこちらを参照ください。