追悼 布施孝之キリンビール社長(2)リストラ、東日本大震災…小岩井乳業再建への道のり
集中化と重点化が再び成功へ導く
明けて2012年――。長年の売上前年割れの悪循環から抜け出すことができず、活路も見いだせなかった。
そんななか、布施さんが目をつけたのは、製法の全く異なる「小岩井生乳(なまにゅう)100%ヨーグルト」だ。生乳だけをじっくりと発酵させ、酸味の少ないなめらかなプレーンヨーグルト。小岩井乳業のフラッグシップになるのではと考え、このよさを伝えることに打開策を求めた。「一番搾り」のリニューアル告知戦略と同じように、「小岩井生乳100%ヨーグルト」を中心に戦略を組み立てた。
「『この素晴らしい商品を出している小岩井乳業ならほかにも凄い商品を持っているはず』と取引先が考えるようになればいい」。
ところが、TVCMを打つだけの金銭的余裕はない。だから、社員には「ほかのことはやらなくていい。これだけに集中し自信と誇りをもって価値を足を使って市場に伝えてほしい」と激励した。素晴らしい商品を売り込み、実際に売れてくるうちに社員のマインドにも変化が生じた。自信が復活してきたのだ。
働く社員を幸せにするためには業績の向上が必須だ。では、どのように上げるのか?社員のマインドを上げることが第一だ。そのマインドと戦略の掛け算が業績になる。その際の戦略は、集中化し重点化すること。だんだんと布施さんの経営手法の輪郭がくっきりと鮮明になっていくとともに、小岩井乳業の再建を見事に果たした。
布施さんは、小岩井乳業の再成長に残りのサラリーマン人生を懸けようと考えた。「小岩井乳業社長がサラリーマンとしてのゴール」と思っていた。(続く)
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