業界の壁を超えたSDGs戦略 廃棄食材で染めるファッションアイテムに脚光!
黒字化に成功、ビジネスとして軌道に
フードテキスタイルが始動したのは、2015年2月。その数ヶ月前に、発起人でプロジェクトリーダーの谷村佳宏氏が、異業種交流会に参加したことがきっかけだった。
「繊維業の商社マンとして20代はがむしゃらに働き、30代で父親になりました。将来を見据えた時に、自分のビジネスのやり方はこのままでいいのかと不安を抱いてしまい、新しいことをはじめられないだろうかと異業種交流会に参加するようになりました。そこで出会ったある食品会社のCSR担当者に『廃棄商品を何かに再活用できないだろうか』と相談を持ちかけられたのがはじまりです」(同)
豊島の代表に「やってみよう」と背中を押されたことから本腰を入れたが、軌道に乗るまでには苦労もあった。
今でこそ、ビジネスの現場でSDGsという言葉を聞く機会が増えたが、当時は、「MOTTAINAI
(もったいない)運動」がようやく世間に認知され始めた頃。取引先のバイヤーやアパレルブランドにプレゼンしてもコンセプトに共感こそ示すが、「なぜ安く買えるTシャツに倍近い値段を払わないといけないのか」と価格がボトルネックとなった。
世界にアピールできる “メイド・イン・ジャパン”にこだわれば、コストが上がってしまう。しかし、日本の伝統的な管理技術に基づく染色方法で特許を取得したという自負もある。
そこで豊島は、商品の付加価値を証明するために、自らアパレル製品を生産・販売。消費者から好評を得られたことで信頼を獲得していった。
転機は、コンバースのアイコン的存在である「オールスター」に生地が採用されたこと。ファッション性、話題性ともに申し分なく、ファンから大きな反響を得られたことで、フードテキスタイルは広く認知されるようになった。現在、取引先企業は、ユナイテッドアローズやアーバンリサーチといったアパレルメーカーを含む60ブランドまで増えているという。