「価値と価格のアピール」をテーマに景気浮揚の追い風つかむ=しまむら 野中 正人 社長

聞き手:下田 健司
構成:小木田 泰弘 (ダイヤモンド・ドラッグストア 編集長)
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PBを「クロッシー」「ソリデル」「フロイデ」に刷新

──主力の「しまむら」業態は14年3月、PBを「CLOSSHI(クロッシー)」「Sorridere(ソリデル)」「FREUDE(フロイデ)」の3つのブランドに刷新しました。15年2月期の商品政策(MD)について教えてください。

しまむら

野中 当社は今期、「価値と価格のアピール」をテーマに掲げています。

 新PBは、上質感を提案する「クロッシー」、ファッショントレンドがキーワードの「ソリデル」、そして低価格の「フロイデ」という態勢になっていて、各PBのコンセプトをお客さまにわかりやすいようにお伝えすることが今期のMDの柱です。

 昨年来、お客さまの消費意欲は比較的強いものの、買物に使えるお金はそれほど増えていません。ですから、商品を選別する目はますます厳しくなっています。

 消費意欲が減衰していくデフレ期と、少しずつ商品単価が上がっていくインフレ期の商環境はまったく異なります。デフレ期は、商品を値下げすればある程度の売上は確保できました。しかし、今は単に値下げするだけではお客さまに見向きもされないでしょう。商品は、価値と価格のバランスが絶妙でなくてはなりません。

 原材料費や人件費、エネルギー費が上昇し、結果として商品単価が上がっていく中では、お客さまの家にないもの、またはまったく新しいもの、そして付加価値を高めたものをどんどん提案し、単価の上昇について納得いただき、購入してもらう必要があります。

 一方で、お客さまは低価格の商品をお求めになることもあります。利幅が少ない低価格の商品を一定数揃えつつ、中価格帯と高価格帯の販売数量を増やして粗利益を確保することが肝要です。その大役を担うのが新PBになります。今期は、組織の力が試される1年になるとみています。

 新PBは、中国北西部の新疆ウイグル自治区でつくられる希少性の高いコットンを使用したカットリーや、フレンチリネンのシャツやニットボレロ、シルエットや素材にこだわったデニムパンツなど、高価格帯の「クロッシー」の開発が先行しています。今後、「ソリデル」と「フロイデ」のラインアップが充実していけば、十分、戦っていけるようになると思います。

──「クロッシー」の寝具にはヒット商品が生まれたと聞いています。

野中 この6月に投入した機能性敷布団「エアスクリーン(C)アルファ」ですね。税込価格が1万4800円と高額であるにもかかわらず、よく売れています。この価格帯の商品がヒットするのは「しまむら」業態ではなかったことです。他社で同等品が2万円台で販売されていることから、当社商品の価格が評価されたようです。

──6月24日からは、千葉県船橋市非公認のご当地キャラ「ふなっしー」を起用したテレビCMを放映しています。

野中 このテレビCMは、3月の組織変更で面白いアイデアが出てくるようになったことを象徴するものです。

 当社の高機能素材シリーズ「ファイバードライ」は、ここ最近は今ひとつ盛り上がらず、マンネリ気味でした。そこで広告宣伝担当者が「ふなっしー」を起用して売上アップを図ろうと実行しました。ご存知のとおり、「ふなっしー」はこの気温の高い時期は、見た目がとても暑苦しい。ですが、動きは俊敏です。その秘密が「ファイバードライ インナー」にあるかもしれないというのがテレビCMの主旨です。テレビCMを見た人は笑ってしまうかもしれません。実際、私は笑ってしまいました。

 このCMは話題づくりが主眼ではありません。どうやったら売上が取れるのか、商品の価値をしっかりアピールするにはどうしたらいいのかと考えた結果、奇抜なCMができたのです。「しまむらは面白い」ということは来店動機にもなります。費用対効果は検証中ですが、うまくいけば“2匹目のドジョウ”もあり得ます。

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構成

小木田 泰弘 / ダイヤモンド・ドラッグストア 編集長

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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