「勝ち組」企業と手を組み強いチームをつくる=アークス 横山 清 社長
アプローチはさまざまでも収益を維持できる企業が生き残る
──13年2月期の連結の売上高は4339億円となり、14年2月期の通期の売上高は4600億円を見込んでいます。今後は年商5000億円をめざしていく方針です。一方で、小売業界ではローカルSMチェーンの淘汰が進み、救済合併の案件が増えてくると考えられますが、企業統合の基準は何ですか?
横山 企業統合については、言うなれば甲子園で準決勝くらいまで勝ち抜いてきた人で、もう1ついいチームをつくろうということです。
非常に不遜な表現になってしまいますが、「勝ち組」としか手を組めません。自分が多少、泳ぎが上手だったとしても、溺れている人に首にしがみつかれたら、一緒に溺れてしまうからです。アークスは、何万人もの従業員が集まるチームですから、まずは自社を守らなくてはいけません。きちんとした企業形態を持ち、投資をしてきていて、人材が育っていることが条件です。
150億円、200億円の年商がある企業の中には、いい店も悪い店もあるでしょう。中には局所的な安売り戦争に巻き込まれて、一時的に業績が上がらない場合もあります。ただし、こうしたケースは調べればわかります。業績不振には原因があり、その原因に対してわれわれのグループの機能や資産を活用して再生できるのであれば、一緒にやれる可能性はあると思います。
新店を出店するとなると、10億円、20億円とコストがかかります。今、せっかくある店舗を空き家にするのではなく、働いている従業員のスキルを生かしながら再生し、ドミナントを強化できたらいいですね。
──企業統合する場合、店舗規模にばらつきが出やすく、標準化が難しいという課題があります。統合先の企業が保有する店舗の仕様に条件はありますか?
横山 一般的には、売場面積の小さいSMは生産性が低いため、価格競争などで大型店に対して不利だと考えられています。ただし、最終的には、きちんと収益をあげて、それを維持、継続できる企業が生き残るものです。
これまでは最も効率のよい標準化された店舗の数を増やし、それに合わせた人材を育成していくというのがSM業界の定石でした。ただ、売場面積1000坪の店舗で年間30億円を売るよりは、その半分の500坪の売場で30億円売った方が儲かります。マーケットによって、あるべき事業のかたちやプロセスは異なります。その環境の中で、収益を出し続けられるモデルであればいいと思います。
たとえば篠原商店は、店舗の真向かいに競合チェーンの大型店があります。それでも、地域に合った適正規模の店で、お客さまの支持を集めている。地域のシェアが高い企業は、その土地ならではの風俗習慣を巧みにとらえながら、地域のニーズに適合したオペレーションができているということ。それは大きな強みなのです。
篠原商店は、「チェーンストア」の定義には当てはまらないし、家族経営のように見えるけれども、従業員にきちんとした給料を継続して支払ってきた企業です。ただ、規模が小さいゆえに、たとえばグロサリーの売れ筋の商品をリアルタイムに入荷することができない、といった不便さを感じるようになっていました。そこで今の状況のまま永遠に続けることはできないと、アークスに入られたわけです。
ナショナルブランド商品を今まで10ケース仕入れていたのが、10倍の100ケースになったところで大して安くはなりません。それでも、インフラやノウハウなどお互いに持っているものを活用し合えるメリットはあります。