ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営15 LTVに着目するとSCの次のビジネスチャンスがみえてくる
「逸失利益」の存在
前項で指摘したようにどんなに来場者を増やしても賃料だけのリターンではどこに問題が存在するのか、図表1で説明したい。
SCへは日々多くの来場者がやってくる。その来場者には必ずLTVという生涯に渡る総支出がある。しかし、SCでは、この生涯価値のうちアパレルや雑貨やサービスや飲食などの購買行動に該当する消費支出しか対応していない。
「最近はテナントもクリニックや金融まで拡大してきたではないか」という反論があると思うが、そこから得る収入は依然テナントからの賃料収入でしかない。このビジネスモデルは50年間変わっていないのだ。
要するに来場者のLTVのうち、SC内のテナントの扱い品目に関連する賃料収入しか収益を得ていないことになり、図表1にある来場者のLTVとSC収入のギャップ、これが逸失利益(失っている利益)となっているのだ。
マルチ収益化
ここで登場するのが、かねてより指摘している「収益のマルチ化」である。その1つが前々回提示したテナントの企業成長からリターンを得る仕組みを構築することだったわけだが、今回は、その矛先を来場者(消費者・顧客)に向けようと言うことである。
では、具体的にどのような仕組みがあるのか、次号にて提示していきたいと思う。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。
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