展望2021:M&Aは再び増加見通し、「ポストコロナ」見据え加速
[東京 6日 ロイター] – 2021年のM&A(企業の合併・買収)は再び増加基調に転じる見通しだ。前年は新型コロナウイルスの影響で件数が減少したが、今年は「ポストコロナ」を見据え、消費構造の変化を捉えた事業の再編や異業種への進出が増えるとみられている。
アジア中心に回復か
M&Aの情報分析を行うレコフデータによると、20年のM&Aの件数は3730件だった。19年の4088件から358件減少。新型コロナ感染拡大の影響で、11年以来9年ぶりに前年の件数を下回った。
ただ、M&Aの交渉自体は、ウェブ会議の浸透でオンラインで進められており、21年は増加基調に戻るとみられている。「M&Aは既に企業戦略の一つとして浸透している」と、レコフデータ社長の吉富優子氏は指摘する。
20年に大きく減少したのは国内企業と海外企業のM&Aだったが、今年は新型コロナの感染が比較的少ない東南アジア企業と国内企業とのM&Aは増えるとみられている。「今年は中国の景気回復を背景に、東南アジアを中心とした案件は徐々に増加する可能性が高いのではないか」と日本総研の山田英司理事は予測する。
一方、欧米では変異種を含め新型コロナの感染拡大に歯止めがかかっておらず、アジアと比較するとM&Aの回復も鈍い可能性がある。
「コロナ後の世界」を想定
21年のM&Aのキーワードは「ポストコロナ」だ。「コロナ禍でも需要が増加している分野や業種への進出を見据え、コロナ禍が明けた時により業績を伸ばせる企業や事業を買収するという流れが加速している」と、日本M&Aセンターの戦略統括事業部、ダイレクトマーケティング1部部長の竹賀勇人氏は指摘する。
例えば、ガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトを受け、部品メーカーなどが事業ポートフォリオの見直しを迫られる可能性が高いとみられる。また、小売業ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)がさらに広がるとの公算が大きく、IT企業など異業種と連携する動きも増えそうだ。
一方、コロナによる業績への打撃が大きい外食や旅行、ホテルなど、インバウンドに依存していた業種においても、売却の相談件数は増えている。「一過性の赤字かどうかが、買い手がつくかそうでないかの焦点になる」(竹賀氏)という。
ライバル同士の連携も
大和証券のコーポレート・アドバイザリー第一部長、矢澤紀倫氏は、ポストコロナ時代に合った経営戦略を立てる企業が増えているとし、「今後はあらゆる業種において、顧客ニーズに合わせた企業の変革が起こるのではないか」と分析する。
東日本旅客鉄道と西武ホールディングスは昨年12月23日、ワ―ケーションの推進や沿線地域の活性化などを軸にした新規事業で包括的連携を行うと発表した。
M&Aではなかったが、ライバル企業の両社が手を結んだことが話題になった。「JR東は路線網に強みを持つ一方、西部HDはホテル事業を幅広く展開しており、お互い補完し合うものがあるのではないか」と、SBI証券の投資調査部長、鈴木英之氏は指摘する。
西武HD社長の後藤高志氏は会見で「ポストコロナ時代における行動変容、価値変容に対応したビジネスモデルを展開できるのではないか」と述べた。
大和証券の矢澤氏は「20年度はもともと進めてきた経営戦略を実行するフェーズだったが、21年度以降はコロナ禍に対応するために各企業がプランニングして、戦略を実行していくフェーズ」と指摘。各企業と今まさにその議論をしているところだと話している。
M&A件数の推移(出典:レコフデータ ※グループ内M&Aは除く)
合計
2010年 1707
2011年 1687
2012年 1848
2013年 2048
2014年 2285
2015年 2428
2016年 2652
2017年 3050
2018年 3850
2019年 4088
2020年 3730