「その話はもう聞いた」という日本人 身につけるべき真の「戦略的思考」とは?
「戦略的思考」とは何か?
「お前のいう戦略的思考とは何か」という質問が聞こえてきそうだから、説明したい。それは、全体を俯瞰した抽象論から論点を絞り込み、最も重要な部分からドリルダウンし各論に落とし込み、課題の真因をあぶり出すこと、である。そして、その課題を解決することで、一気に進むべき方向性を変える、ということである。
日本人は、「今私が説明したことを何というか?」というペーパー試験をだせば、「ピラミッドストラクチャー」です、と答えることは得意なのだが、いざディベートをさせると、「新しい話はないか?」と的外れな質問をする。
テレビを見れば、今や「東大王選手権」、「お笑い芸人大会」、「グルメ紀行」の三択しかなく、芸能人は「XXX48」ばかりとなり、昼の話題は「芸能人の不倫話」ばかりになった。私たちは、ますます考える力を失いつつあるように思う。
今、株価が下がれば外国企業だけでなく、日本企業からも買収攻撃に遭うし、ユニクロは日本よりも海外から利益を得るという一昔前では考えられないようなことが起きてきた。さらに、消費をしないといわれている日本人が、最も金を使っている携帯電話はハードを韓国が、ソフトは米国が作っている。日本企業が「それ、EC化だ!」と叫べば叫ぶほど日本の金は海外に流れてゆくだろう。
循環経済といえば聞こえは良いが、ようは成長が止まったということで、マクロ的な先進国の行き着く果ての姿という大局的意味あいと、経済政策や企業戦略に失敗し個別企業の成長が望めないという意味を混同し、両者を都合の良い具合に使っているように見える。デジタル化などはその最たるものだ。アメリカは、もはや我々の手本たりえない。私たちは、日本という国家、企業、国民の特殊性を考え、我々しかなし得ない独自の戦略を考える時期に来ていると思う。特に、デジタルが得意だという人の大局観のなさ、あるいは、戦略が得意だという人の業務プロセスに対する不理解は深刻で、私はここに大きな溝を感じざるを得ない。
これからの経営者に必要な3つの新たなアジェンダ
私は、ことあるごとにM&A、デジタル、オフショアは、これから経営者に突きつけられる新しいアジェンダで、単にCFOにデューディリジェンス(企業価値評価)をやらせ、CIOにデジタル化を推進させ、海外支店長に海外戦略を丸投げするという経営が破綻している姿を幾度も見てきた。中には、かけ声だけ威勢が良く、ろくに資金繰りも読めない経営者もいたぐらいだった。M&A、デジタル、オフショアは、それぞれ有機的に、そして、戦略的に結合し相互依存しあっている。
本稿のテーマであるデジタル化など、その最たるもので、テクノロジーの変化は早いから専門家に任せようでは企業のデジタル武装は遅れたままだ。
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)