コロナ後の顧客をつかむ「攻めのIT化」とは!?「新しい生活様式」がもたらす外食ビジネスの大変化・後編

鈴木文彦 大和エナジー・インフラ投資事業第三部副部長
Pocket

 また、衛生的な文脈でキャッシュレス化が進むだろう。ちょうど、消費税率引き上げに伴う需要平準化策としてキャッシュレス支払いにかかるポイント還元策が6月末に終了した。これまでは利便性や、こうした還元策によるお得感で選択していたキャッシュレスだが、コロナ禍をきっかけに衛生上の理由が加わった。不特定多数が触った紙幣や硬貨に触れることに敏感になるからだ。日本フードサービス協会が策定した外食業の事業継続のためのガイドラインでも「可能であれば電子マネー等の非接触型決済を導入する」とされている。

 ポイントカードなど会員登録も感染対策の内だ。ただしその店で感染が発生したとき感染ルートを追跡することを想定すると、氏名を含む正確な連絡先が必要になる。先般、新型コロナウィルスの感染拡大防止のための指針で、接待を伴う飲食店について客の連絡先の把握が求められたところだ。このことは多くの議論を呼んだが、コロナ後の環境変化のひとつとして象徴的なことではある。

50%の稼働率のなかで取り組むべきこと

 「新しい生活様式」の実践例、たとえば会話を控えめにするとか、対面ではなく横並びで座るとかをそのまま受けとめると牛丼店などカウンターが主、テイクアウトも営業の柱となっている業態を想像する。持ち帰りや出前、デリバリーといえばピザ宅配だ。こうした業態はそれほど大きな変化なく適応できるだろう。

 それ以外、テーブル主体の業態はいかに考えるべきか。社会的に高まった衛生観念に対応するのも労務、会計をはじめ内部管理体制を充実・強化するのも固定費のかさ上げ要因となる。他方、密集を避け席の間隔を空けなければならないとすると客数を増やせない。仮に一席ずつ空けると満席でも稼働率は50%にとどまることになる。50%の稼働率で採算をとるにはどうすればよいか。

 オペレーション上の工夫で増加幅を緩和する余地はあるかもしれないが、基本的には固定費の増加と稼働率の低下は客単価でカバーせざるを得ない。考えるに、「新しい生活様式」において、伝統的な店内飲食サービスはそれなりのコストがかかるチャネルになった。そのコストを価格に転嫁できるか否かが判断のしどころだ。

1 2 3

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態