コロナ後の顧客をつかむ「攻めのIT化」とは!?「新しい生活様式」がもたらす外食ビジネスの大変化・後編

鈴木文彦 大和エナジー・インフラ投資事業第三部副部長
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 ひとつの方向性は無店舗販売だ。コストがかかる店内飲食サービスから撤退し、無店舗販売に切り替える。冒頭上げたテイクアウトを主体とする。あるいは出張料理サービスも一考だ。

 もうひとつは店内飲食サービスにかかるコストを価格転嫁する選択肢だ。これは客単価が高い業態に転換することを意味する。個室主体で客単価の高い業態、コース料理が主なメニューの高級レストラン、料亭など味はもちろん、サービスや店の雰囲気も楽しむ業態だ。実名、所在の登録を含む予約制にも合う。

「攻め」のIT化に成功した老舗旅館

 IT化と同様、これもサービス業の生産性の課題解決策として捉えることができないだろうか。コロナ禍の前、外食産業は慢性的な人手不足に喘いでいた。要因には収入水準と定着率の低さがあったはずだ。料理とサービスの専門性を上げ、IT化を内部管理のためだけでなく、顧客管理システムをはじめ顧客サービス向上のツールとして活用するなど、客単価を上げることはコロナ禍とは関係ない普遍的な課題だった。

 この点はたとえば、神奈川県秦野市の鶴巻温泉にある1918年(大正7年)創業の老舗旅館、元湯陣屋の再生劇が参考になる。それまでの低価格路線を転換、コース料理の食材や演出にこだわった。そして、予約、会計処理から顧客情報システムまで統合した「陣屋コネクト」を開発した。客の好みや苦手な食材、アレルギーなどを把握し、気の利いたサービスの提供に役立てている。効率化だけでない攻めのIT活用が奏功し、業績回復とともに従業員の離職率が低下するなど働き方改革にもつながった事例だ。

「新しい生活様式」への適応策が、コロナ禍に対する「守り」の方策ではなく、コロナ禍を奇禍ならぬ奇貨とした「攻め」の戦略になることが期待される。

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