数々の米アパレルを死に追いやったアマゾン・エッセンシャルズ静かに日本に上陸

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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アマゾン・エッセンシャルズを成功させる戦略提言!

 いずれにせよ、Amazon fashionのPB、アマゾン・エッセンシャルズは立ち上がった。誰も知らない中で、静かに。あれだけメディアで騒がれたアマゾンのPBである。このまま、スーパーの特売品のようなものを売り続けてゆくとは思えない。アマゾンが日本で猛威を振るうための唯一の方法は、日本の特殊性を理解することだ。つまり、単一民族で四季があるこの国では2万社もの中小零細企業がひしめきあい、ユニクロ、無印良品など国際ブランドが鉄壁の参入障壁を築いていると言う点だ。

 そして、全世帯の5%しかいない世帯年収1000万円の層を、判で押したように「高くても買う人はいる」という無邪気な発想で、百貨店向けアパレルが次々と死んでいくいびつな構造に風穴をあけるためには、本来狙うべき95%の人口に対して、ユニクロ価格、あるいは、それ以下の価格でユニクロと同等、あるいはそれ以上の品質を実現することである。このセグメントには、ユニクロ以外にも外資SPA、ワークマン、無印良品、ハニーズ、しまむらなどがひしめきあっている。彼らに勝てなければ事業は拡大できないのだ。

 そのためには、こんなレベルの商品で勝負するのでなく、日本の商社としっかり手を結び、マーケットを日本だけでなくグレーターチャイナ(中国、韓国、台湾)まで視野にいれて、素材開発からMDを一から設計し、データを駆使して「ニューベーシック」というアマゾンらしいセグメントを開発することだ。

 日本で快進撃を続ける無敵のアマゾンである。できれば私の助言にきちんと耳を傾け、しっかりとしたビジネスプランを作っていただきたい。世界化に遅れ、日本の中だけで潰し合いを行っている日本のアパレルを本当の意味で強くしてゆき、世界で戦える企業に育てるためには、東京でZARAやH&Mがやっているような世界戦を激化させ、徹底して世界品質、世界レベルのビジネスモデルで勝負することしかないだろう。

 

 静かにローンチしたアマゾン・エッセンシャルズだが、もし、このままでは消えていかざるをえないだろう。しかし、あのアマゾンがこれで終わりだとは誰も思わない。この1〜2年で、我々を驚かせる「何か」をしてくれると期待している。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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