いちばん“敏感”な人に合わせて店が選ばれる 「新しい生活様式」がもたらす外食ビジネスの大変化
緊急事態宣言が解除され、街は日常を取り戻しつつある。とはいえ、良くも悪くも新型コロナ流行前の状態に完全に戻ることはないだろう。待てば過ぎ去ると思っていたコロナ禍がわれわれの経済活動に環境変化をもたらした。とりわけ外食産業はその影響をもろに受ける。衛生はじめ管理体制の強化が求められる中、コストを転嫁してもなお納得感を得られる工夫、高付加価値型を念頭に置いたビジネスモデルの転換が必要だ。本稿は前後編に分け、前編でコロナ禍にもたらした環境変化を整理し、これを踏まえたビジネスモデルについては後編で展開する。
コロナ後の外食需要はどうなるか
緊急事態宣言の解除後、街は日常を取り戻しつつある。東京都の場合、活動再開ロードマップに沿って飲食店の夜間営業も徐々に緩和される予定だ。とはいえ、新型コロナ流行前の状態に完全に戻るだろうか。
今までできそうでできなかったテレワークがコロナ禍に強制されるように一気に進んだ。それでオフィスに出勤しないビジネススタイルも試してみると大きな問題がないことがわかった。5月22日公表の日本生産性本部の調査によれば、組織で働く雇用者の6割強が新型コロナウィルス収束後も継続に肯定的だった。
外食産業の立場で考えてみれば少なくともランチを利用するオフィスワーカーは減るだろう。時差出勤の導入も進み、社員が一斉に集まる機会が少なくなった。日程調整が難しくなれば夜の懇親会も少なくなる。郊外の工場や店舗に勤める人は車通勤がふつうなのでアルコールが入る夜のイベントは前もって示し合せなくてはならない。あのような感覚だ。
ビデオ会議も普及した。霞が関で開かれる公募説明会、全国の拠点から営業マンが集まる会議、逆に本社の部員による地方拠点の巡回など、複雑な交渉を伴わないような出張はビデオ会議に置き換わるだろう。通信環境に多少の難があってもコスト削減のメリットが上回る。こうしたことも夜の飲食市場の縮小要因になりえる。