第113回 SCとは、”商業テナント縛りの不動産賃貸業”である
時代劇ドラマでは町民は長屋に住んでいる。持ち家政策は戦後の国策であり、もともと日本人の生活の基礎は借家文化だったことを考えると、不動産賃貸業というビジネスがいかに古い仕組みだったかと驚く。この不動産賃貸というスキームからつくり出されたのがショッピングセンター(SC)である。では、この長屋とSCは何が違うのか。今回はそんなユニークな切り口から、SCの本質に迫る。

賃貸先は多種多様
不動産は売買、賃貸、仲介で利益をあげるほか、最近では、証券化(流動化)手法も加わり、その運用は多様化している。また、賃貸ビジネスの貸し先(借り手)は、住宅だけに留まらず、ホテル、病院、公共施設などのほか、今ではデータセンター、シェアオフィス、コワーキングスペースなど、多岐にわたっている。これらはすべて賃貸で収益を生む事業用不動産に区別されており、業界内で明確な基準がないものの、オフィス、小売店、SC、レストランなどを賃貸先とするものは商業用不動産とされる。
商業テナント(物販、飲食、サービス)と賃貸契約を結ぶ不動産物件を狭義の商業用不動産と定義すると、その利用イメージは沸きやすい。オフィスや工場などは保安警備上、不特定多数の出入りを規制するよう設計しているが、食品スーパー、家電店、飲食店などは多くの来店者を前提に設計している。そのため、前者は入退館システムやセキュリティが装備され、後者は不動産の用途、目的、テナントの種類によって設計やデザインが変わってくる。
その中で、不特定多数の客を相手に収益を上げる商業テナント(物販、飲食、サービス)を集めたもの、つまり、不動産賃貸というスキームを利用した「商業テナント縛りの不動産賃貸事業」がSCである。
商業テナントの特徴は、賃借した場所が収益に直結するプロフィットセンター(収益獲得の場所)であることだ。オフィスや物流施設は本業を支えるサポート機能であり、その場所の家賃や人件費は経費であり、利益を集計しないコストセンターとして費用に計上される。しかし、SCテナントは、その場所で商品やサービスの提供を行い、収益を上げることが目的である。
最近ではBOPISなど、ECと連動した販売方法やネットで事前決済を行うことも増えたが、多くは、その場所で商品やサービスを提供し、そこで収益を上げる。
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