アフターコロナの小売像その3 コロナ禍でも進まない無人店舗普及

森谷信雄(ライター)
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アフターコロナの世界の実店舗では、“密”を回避する動きが続く。密集、密閉、密接の「3密」を避ける取り組みは、コロナが収束した後も長期間、実行されるのは間違いない。3密のうち「密接」を回避するのに期待されるのがセルフレジや無人店舗(レジレス店舗)だ。しかしセルフレジの導入はともかく、無人店舗は先行する中国や米国でも展開スピードは遅い。コロナ禍を契機に、決済の合理化は加速するのか。

無人決済導入に拍車?

 多くのスーパーやコンビニで、従業員とお客の接触を避ける工夫がなされている。コンビニ業界ではレジ台に透明なカーテンを設置したり、使い捨て手袋を使用するなどの対策を講じている。レジに並ぶ際の立ち位置を表示したり、現金を直接手渡ししないようトレーに釣り銭を置いたりする取り組みもよく見かける。

 アフターコロナの小売では、このようなスタイルが定着するとみられ、人手を介さない決済の導入が進むのは確かだろう。セルフレジ導入が加速し、無人店舗が普及する可能性も指摘されている。

 動きが見られているのが大手コンビニだ。ローソン(東京都)は、コロナ対策の一環で、今年4月末までに4500店にセルフレジを導入。富士通と組んで、顔認証と静脈認証を組み合わせたマルチ認証システムを取り入れたレジレスコンビニの実験も川崎市で実施している。

 セブン-イレブン・ジャパン(東京都)でも、複数の既存店でセルフレジの実験を始めており、NTTデータとのタッグによるQRコード認証のレジレスコンビニの実験も進行中だ。ファミリーマート(東京都)も顔認証決済の実験をしている。国内でも、ようやく決済の合理化が緒についたかたちだ。

なぜ「無人店舗」は普及しないのか

 だが、レジレス店舗で先行した中国、米国を見てみると、その後出店に弾みがついていない。

 米アマゾン・ドット・コムのレジレスコンビニ「アマゾンゴー」は、1号店が開設されてから2年以上が経過しているが、店舗数は全米で20店台にとどまる。米大手メディアで報じられた「21年までに3000店」という計画も達成できるか雲行きが怪しくなってきた。

 中国では一時期、無人コンビニが雨後の筍のように出現したが、現在は淘汰され店舗数は大きく減少している。コンテナ型の無人コンビニ「ビンゴボックス」でさえ、数店規模まで縮小しているという。なぜだろうか。

 無人店舗(レジレス店舗)は決済の合理化、ビッグデータの収集という点で注目された。「消費者の店舗選択は、決済だけが優先されるわけではない。お客さまは品揃えの良し悪し、立地条件、価格など総合的な判断で店を選ぶ」(大手スーパー幹部)。

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