GUがアンダーカバーとの新ライン「UG」を始めるスゴいねらいと効果

GUは、ユニクロがベーシック衣料を総なめしたように、低価格ファッション領域で圧勝するにはまだ武器が足りないというのが悩みの種ではないだろうか。そこで、UNDERCOVERと組んで競合に戦いを挑もうとしたわけだ。果たして、彼らのブランド戦略に勝算はあるのだろうか?
私の考えでは、このGUとアンダーカバーのコラボは当初、消費者による激しい商品の奪い合いが始まるだろう。しかし、+Jの時と同様にどれだけの期間継続されるかは不透明なところだ(+Jは)。この“瞬間風速”的なコラボラインの“ブーム”は、過去同社が幾度も経験してきたことだ。
しかし、大事なポイントは、この瞬間風速的なコラボラインの人気獲得は、失敗なのか、それとも狙ってやっていることなのか。これをどう解釈するかによって、違った景色が見えてくる。
もちろん、狙ってやっていることなのだ。ヒントは「ユニクロ、GUをプラットフォームとして考える、ということだ。どういうことか?
ユニクロ、GUは「プラットフォーム」である
ファーストリテイリングはユニクロ、GUのサプライチェーン、MD をあたかも“ロケットの発射台”、つまりブランドのプラットフォームのようなものとして位置付けているように見える。
そもそもファッションというのは、女性誌の数をみればわかるとおり(どんどん減っているが)、非常にその種類は多く細分化されている。たとえば、ここで一度ブランドにストリート系の色がついてしまったら、もとに戻したり違うテイストのブランドに変えるのは極めて難しい。ブランドの持つ「色」というのは、それぐらい大事だし背反性が強い。小さなサイズのブランドであれば「色」があることが大事だし、その特定のカテゴリーのなかでも生きることは可能だ。だが、GUは3191億円(24年8月期)、ユニクロは国内だけでも9322億円(同)のメガブランドなのである。
そこで、あえて割り切って、GUあるいはユニクロを「ブランドのプラットフォーム」と位置付けたらどうだろう。「GUとユニクロ は常に最新のファッションがいつもそろっている。今は、ストリート系だ」、ということになり、逆にGU、ユニクロというプラットフォームのなかで、さまざまなラインやブランドが常に新しくできては、新陳代謝を繰り返す方が、プラットフォームの魅力を常に高く保つことができる。
私はファーストリテイリングはそこまで考えてブランド開発を行っていると思う。
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