ローソン、約400億円を投じてオーナーの複数店経営を増やす理由
新規加盟オーナーには既存店の運営を任せる
中長期的な戦略としては、新規加盟オーナーに対して、新店ではなく既存店を割り振る計画だ。これまでは新規加盟オーナーに対して新店を任せていたが、今後は直営またはFCの既存店を引き継ぐというかたちに変更する。これによりオーナーは事前に売上がある程度予測できるほか、パート・アルバイト従業員も引き継いで開業できるため、売上に対する不安や求人コスト・教育の負担が軽減できるというメリットがある。「新店では予測日販と実際の売上が乖離してしまうこともあり、オーナー様の不満につながることがあった。(既存店の場合はより正確なデータを提示できるため)きちんと納得して契約していただき、ミスマッチをなくしたい」(竹増社長)。
新規出店については従来の契約方法を見直す。これまでは本部が先に物件を契約し、その後既存加盟店の承諾を得てオープンしていたが、今後は物件の契約前に既存加盟店と相談し、承認を得た後に物件を契約する。本部と既存加盟店双方の判断により出店場所を決定できる仕組みにすることで、より加盟店に寄り添った出店に切り替える考えだ。
そのほか、FC契約では従来の10年契約に加え、5年の短期契約を導入する。「たとえば高齢のオーナーが契約を更新する場合、10年では長いが5年なら継続できるというような状況に柔軟に対応したい」(竹増社長)。なお、5年契約はオーナーの年齢を問わず選択できる。
加盟店支援に約400億円を投入
ローソンは20年度の加盟店支援に約400億円を投入する考えだ。また、本部の数値目標を売上から「店利益」(加盟店の利益)へと変更し、20年度の店利益では対前期比10%増をめざす(19年度は推定5%増)。さらに、店利益を本部の「最重要KPI」(全社員の賞与に対するKPI)に設定することで、本部が加盟店の利益にこだわり、より責任を持つ体制の構築を図る方針だ。
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今回の発表の前日には、経済産業省がコンビニエンスストア(CVS)のあり方に関する有識者会議を開催した。会議では、24時間体制や食品ロス削減などCVSを取り巻くさまざまな社会問題に対し、環境の変化や店舗の状況に応じて柔軟に対応することが提起された。竹増社長は今回の大規模な加盟店支援に関して、「加盟店の利益を守ることが本部の成長につながる」とし、持続可能なビジネスモデルをめざすとしている。もはや社会的インフラとまで言われているCVSの事業を維持するためには、ローソンのような加盟店支援は必要不可欠だろう。