実録!働かせ方改革(8) 経営危機でも「急がば回れ」 社員の定着率を高め組織づくりからスタート!
新卒採用者の定着を図り、社内組織の協力体制を構築
今回は、新卒採用をすることで営業部の体制を整え、巻き返しを図った事例だ。私が導いた教訓を述べたい。
ここがよかった ①
定着率に目をつけた
定着率向上に目を向けたことが、まずよかった。多くの業界では、中途採用よりも新卒採用のほうが定着率が高い傾向がある。そのため、新卒採用をスタートしたことは賢明な判断といえる。定着率が高いと、チームや部署、会社全体の組織づくりがしやすくなる。ある程度の期間をかけ、社員間の協力体制も構築されるからだ。また、継続して1つの仕事に取り組めるため、満足感や達成感を得る機会が増える。このような仕組みを設けないと、通常、定着率は一定の期間で上がらない。
負債を返済する場合、コスト削減だけでは限度があるため、トップライン(売上)と利益率を高める意味でも、営業力の向上は欠かせない。だが、多くのケースでは目先の数字に追われ、その大本になる人材の定着率アップにフォーカスすることをまずしない。だからこそ、「急がば、回れ」の発想で、新卒採用に取り組んだことが英断だったのだと私は思う。
ここがよかった②
待遇の改善
定着率と同様、待遇についても見落としがちだ。とくに手当てや残業削減に力を入れたことが営業改革の成功につながったのだと考えられる。つまり、お金と労働時間などの環境を整えないと、今は社員の心をつかむのは難しいのだ。小さな会社では、待遇の改善はすぐにはできないのかもしれないが、試みることそのものはしたい。その姿勢を社員たちは見ている。
負債の返済といえば、とかく目先のことばかりに躍起になるものだが、社員の立場になって考え、可能な限り就労環境を整えよう。これもまた、「急がば、回れ」ではないだろうか。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
連載「私は見た…気がつかないうちに部下を潰した上司たち」はこちら