実録!働かせ方改革(8) 経営危機でも「急がば回れ」 社員の定着率を高め組織づくりからスタート!

2020/02/18 05:52
神南文弥 (じんなん ぶんや) 

働き方改革が進み、残業時間削減や有休休暇促進、在宅勤務に踏み込む会社が増えてきた。それにともない、働きやすい職場が注目されている。本シリーズでは、部下の上手な教育を実施して働きがいのある職場をつくり、業績を改善する、“働かせ方改革”に成功しつつある具体的な事例を紹介する。
いずれも私が信用金庫に勤務していた頃や退職後に籍を置く税理士事務所で見聞きした事例だ。諸事情あって特定できないように一部を加工したことは、あらかじめ断っておきたい。事例の後に「ここがよかった」というポイントを取り上げ、解説を加えた。
今回は、大きな負債を抱え込みながらも営業改革を行い、完済した企業の静かなる挑戦を紹介したい。新卒採用をスタートして定着を図りながら、営業力を強化し、業績回復につなげている。ぜひ、ご覧いただきたい。

Photo by chachamal
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第9回の舞台:ゲーム店やカラオケ店の企画・運営

(社員120人、アルバイト1200人)

 

営業力を強化し、業績回復をめざす

 現在の社長(62歳)が就任した約15年前、負債は6億円ほどあった。売上は30億円前後だ。前社長は借金返済のため、金融機関を奔走していた際、トイレで意識を失い、急性心不全で亡くなった。ストレスのため、心身疲労の蓄積がピークを超えたのでないか、と社内ではささやかれた。

 前社長は創業者で、大株主ということもあり、社内では怖い者がいなかった。労働組合はなく、役員や管理職の大半はイエスマンだった。会議はほぼ毎回、社長が1人で話し続ける。そのため、競合店が増え、ゲーム店やカラオケ店の売上が減少するといった厳しい状況に対しても、社内で意見を言う者はほとんどいなかった。この頃から、慢性的に負債を抱え込むようになった。

 現在の社長は就任直後から、業績を回復させるために徹底して営業体制を強化した。とくに重視したのが、新卒(主に大卒)採用だ。以前は中途採用のみだったが、定着率は低かった。ベテランの営業部員数人は稼ぐが、それ以外の多くは給与分の働きすらできていない。このような状態が、営業力を弱くしている一因ととらえた。そこで、定着率を上げ、社員を育てるために新卒採用を始めたのだ。最初の数年間、エントリー者数は20人ほどだったが、現在では毎年200∼300人を超えるまでになった。ここ数年の内定者は、2∼3人だ。

 そのうえで、全営業部員60人ほどに、毎月役職や在籍年数に応じて3∼7万円の手当をつけることにした。毎月の報奨制度を設け、営業成績の高い社員には1回につき、10∼15万円の一時金を与えた。年間で多い社員は、70万円程度になるという。残業は営業部の月平均が40時間程だったが、現在は15時間程になった。年末年始と夏季休暇を合わせると、20日以上休めるようにもした。

 営業部を中心とした改革は功を奏し、社長就任5年目から業績は回復しはじめ、負債は13年目に完済した。その大きな理由として、社長は「新卒採用」を挙げていた。

 

 

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