ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
顧客の拡散が裏目に、そしてライザップ傘下に
その後、ギャル市場が縮小する中、さらなる顧客をもとめ、シルエットをもっと普段使いできるようマイルドにしたブランドをいくつか出したが、そのどれも思うように伸びなかったと思う。私達経営戦略に精通した人間であれば、「選択と集中」「絞り込み」が勝利の一歩と考えるのだが、夢展望は「違うラインをだせば、違う顧客を獲得できる」と考えた。その結果、見事IPOを果たしたものの、他の通販サイトと変わらないブランドができあがり、ブランドの個性がどんどん薄れてしまったと私は感じている。結果、上場で得られた資金のほとんどを使い果たしてしまい、2015年にRIZAPグループ(当時の社名は健康コーポレーション)入りすることになる。
私は、幾度も岡社長に会って、「創業時の勝ちパターンを思い出してほしい」「あの強烈なギャル・ブランドを復活させたほうがよい」と進言したのだが、すでに現場を離れた岡社長にとって、私の助言は右から左へと流された格好となった。
その後、機会があってRIZAPグループの瀬戸健社長にお合いするチャンスがあり、そうした歴史を語ったことがある。
当時のRIZAPは夢展望の他にいくつかアパレル企業を傘下に持っていたものの、そのどれもがうまくいっているとは言えない状況だったため、ワールド出身者による改革チームをつくり、アパレル企業の立て直しを行っているところだった。そのワールド出身の人たちは、私の報告書を読み「その通りなんです」と同意してくれたが、思い切った行動には移せなかったようだ。
その後も夢展望の業績は浮上しないまま、2期連続の営業赤字が続く中での今回のTemuとの事業提携である。同社は現在、フリフリのガーリーラインに路線を変更したようだ。その意味では個性は出ているが、こういう服を欲しがる層は多くはないのが実情だ。
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