オワコンかは関係なし!アパレル企業に投資して大勝ちする4つのポイント

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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アパレル企業への投資、抑えるべき4つのポイントとは

アパレルのイメージ
(i-stock/djedzura)

 それでは、アパレル産業に対して如何にして投資をしていけばよいのかを考えていきたい。

 繰り返すが、「アパレルはオワコンだから投資に向かない」と考えるのは誤りだ。投資にオワコンも何もないからだ。前述のとおり、「最低価格と最高価格の差」が大きい株式銘柄であれば、たとえ業績が振るわなくても十分投資に値する。

 例えば、今にも破綻しそうな企業があったとしよう。これをどこかの企業が買収しようと声を上げれば、当然、株価は上がる。その時大事なことは、あなたが、その企業の中に投資に十分見合う「強み」を見出すことができるか、あるいは強みが見えるかどうか、なのだ。

 「この会社は絶対的な“強み”があるから、どこかが絶対に買うはずだ」

 そう確信すれば、あなたの責任(投資は自己責任だ)でその企業の株を安く買うことも可能だ。逆に、トヨタやソニーのような超優良企業の株価はほとんど動かない。売り手と買い手が均衡しているので、大きく儲かりもしないが、損失も少額だ。そういう意味で、アパレルの投資は非常にダイナミックでおもしろい。

 また、アパレルのP/L(損益計算書)は信じられない。「信じてはならない」という方が正しいかもしれない。それは、アパレルのP/Lは余剰在庫を損失計上するか否かで利益率を自由に変えられるからだ。

 ここを間違っている人が多いのだが、正しい会計処理は処理方法が変わらなければよくて、企業の数だけ在庫の処理方法があることになる。また、正しいか否かは会計士が決めるのではなく、基本的には事業責任者が決めることで、会計士は会計処理が昨年、一昨年前と変わるか否かを調べ、同じ処理方法であれば「正しい」ということになる。したがって、株式の高値、安値を見るPERは会社の数ほどあることになり、まったく当てにならないわけだ。

 例えば、ワークマンのようなトレンドに左右されない作業服などは長いものになると数年も損金処理せずに在庫として持ちづけることができる。私が手がけた通販は2シーズン経つと損金処理をしていて、なんと家具など10年先でも定価で売れるような商品でも2シーズンで損金処理をしていた。こんなことをしていたら、ユニクロよりベーシックな家具や雑貨までファッション商品と同じ処理をしていることになる。

 つまり、在庫に対して保守的な企業は、トレンドに左右されやすく、ある一定期間が立つと商品価値が下がるから損金処理をするのだが、逆の企業もあるということだ。すでに価値のない(=マーケットで売れない)在庫を簿価で大量に保有し、それゆえ例年高い利益率を維持している企業があるとすれば、そこは要注意ということになる。繰り返すが、たとえそうだとしても会計処理上正しければ、それは「適正」なのである。

 アパレル企業への投資で儲けようとしたら、①期限を決めず長く持つことができる余剰資金でやる、②投資に十分見合う「強み」があるかどうか、③見る目を養うこと、最後に④販売している商品の価値の残存期間と在庫評価損の期間を考慮する、の4つが大事だ。もちろん日経新聞などでアパレルの記事をしっかり読み込むことも必要だ。

 

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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト
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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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