アパレルのいまを全解説!GU、しまむらとシーインを比較してはいけない理由

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
Pocket

新宿伊勢丹の売上3700億円!
百貨店のこれからとスーパーブランドの戦略

伊勢丹新宿店外観

Q7 新宿伊勢丹店の売上は23年度、3758億円(対前年度比14.7%増)に達した。2位の阪急うめだ本店は3140億円、同20.3%増となった(なおそごう西武は売上非公表) 。これら都心巨艦店が売上急拡大する要因とどこまで増えるか、さらには他の百貨店店舗との格差はどうなるか。

河合 これは明確で、インバウンドが増えたのが理由です。今、東京の渋谷や新宿、浅草などにいけば「ここは東京か?」という印象を受けます。また、大阪でも梅田やミナミ、日本橋などにいくと、「ここは日本か、大阪か?」と同様の印象を受けます。

 あくまでも感覚値ですが、多いところで2~3割ほどがインバウンドの店やカテゴリーもあるのではないでしょうか。逆に、百貨店でインバウンドの恩恵をうけていないのは、地方の百貨店でインバウンド客がリーチしないエリアにある百貨店でしょう。そうなるとそもそも他の商業施設にお客を奪われていた地方百貨店は、人口減少や値上げに伴う消費マインドがさらに打撃を与えることになります。

Q8 都市部の百貨店復活が目に見えるなか、海外スーパーブランドの戦略に何か変化は起こりそうか?また日本市場向けに高級ブランドなどの積極的な店舗展開は起こるのか?

河合 スーパーブランドはマクロ的に見ると、大きな変化があります。一昔前のスーパーブランドは、いわゆる定番といえる商品を持続的に売っていましたが、最近は、非常に速いスパンで新しいバッグやコレクションをだしてきています。しかも、中には妙なアニメの絵が描かれているようなものや、ロゴマークをおもいきり大きくしたものなどです。ある意味、ファッションの面白さが戻ってきたのだともいえますが、同時に、スーパーブランドも必死なんだということがわかります。

Q9 こうしたなか、いわゆる百貨店アパレルの状況と課題は何か。今後どのような手を打って成長と利益確保を実現していくべきか?

河合 百貨店アパレルとスーパーブランドの状況は違います。また百貨店の中の衣料品のシェアは30%程度で、あとは雑貨などです。さらに、インバウンドが日本の百貨店で商品を買う本当の理由は、自国ではニセモノをつかまされている可能性があるからです。信じられない話ですが、中国のLOUIS VUITTONで購入した商品が偽物であったとしてお客が提訴し、お客が勝訴した事件もあるぐらいです(そのお客が本当に中国のLOUIS VUITTONで買った商品なのかどうかは依然不明ですが、裁判所がLOUIS VUITTONに支払いを命じたことは事実です)。

1 2 3 4 5

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態